声優・山寺宏一の超絶無双ぶりは『アンパンマン』でわかる 「無理」と音を上げた事態とは?
熱心なアニメファンでなくても、日本人の多くが知る声優界の大御所・山寺宏一さん。その声の変域は広く、イケメンから無生物まで自由自在。そんな山寺さんの無双ぶりを『アンパンマン』で解説します。
「カバオくん」「チーズ」「かまめしどん」…さらに今では?
彼の本当の声を知っているものはひとりもいない……そんな伝説がまことしやかに語られる日本声優界の宝、山寺宏一さん。1985年のOVA作品『メガゾーン23』のデビュー以降、国民的アニメの主役はもちろん、エディ・マーフィやジム・キャリーといった洋画の吹き替え、そしてある世代からはテレビ東京『おはスタ』のメインMCとして、さらには俳優業やタレント業もこなす、八面六臂の活躍をし続けてています。その評価はアニメファンだけにとどまらず、2017年にはプロが選んだ『声優総選挙』でも堂々1位を獲得しており、その影響力は計り知れません。家族の声よりも聞いているなんて人も少なからずいらっしゃるでしょう。
山寺さんの「声優」としての魅力はなんといっても声の変域。ディズニーのスティッチやドナルドダックなどかなり癖の強い声質のキャラから、『カウボーイビバップ』の主人公スパイク・スピーゲルといった究極のイケボキャラまでまさに変幻自在。そのため
ひとつの作品で複数の役を演じ分けることは日常茶飯事のようで、『ヤッターマン』では「ヤッターワン」をはじめとする実に16役ものキャラクターを一手に引き受け、エンドロールでは山寺宏一無双状態になり、話題を集めました。
さらにさらに……ショートアニメ『彼岸島X』ではまさかの前人未到のひとり50役!主要キャラはもちろん吸血鬼1、吸血鬼2、吸血鬼3……とこれら全てが「山寺宏一」クレジット。ほかにも「蚊」「焚き火」の音までも山寺さんが担当。同作は毎回、ひとりの声優が全役担当というコンセプトではありますが、「焚き火」といった無生物(SE)まで担当。山寺さんだからこそなせる神業でしょう。
●同時に3役? ますます無双に拍車がかかる『アンパンマン』
さて、そんな山寺宏一さんの名演、怪演を堪能するにうってつけの作品こそ、国民的アニメ『それいけ!アンパンマン』に違いありません。ひとたび、チャンネルを合わせればそこはもう山寺無双の会場なのです。
『アンパンマン』では山寺さんはゲストキャラを含め、数えきれぬほどのキャラを演じてきました。カバオくん、かまめしどん、そしてチーズといったレギュラーキャラだけでもすでに3役をこなしています。チーズも山寺さんであると知った時の衝撃ったらありませんでした。さらに、2019年にジャムおじさん役を30年にわたって演じてこられた故・増岡弘さんがご卒業。その後任に指名されたのまさかの山寺さんだったのです。この大抜擢にはネットでも「チーズとジャムおじさんが同じ声優になる」と大騒ぎ。山寺さんは「少しでも増岡さんのジャムおじさんに近づけるよう、精一杯つとめさせて頂きます」というコメントを発表しました。
こうしてパン工場のメンツのうち2名が山寺さんという座組みとなった『アンパンマン』でしたが、ついに2021年2月、山寺さんご本人が「さすがに3役同時はムリ」と音をあげる事態が発生。なんとその時の台本にはチーズ、ジャムおじさん、かまめしどんが同時に「いただきまーす!」と話すシーンが存在していました。無論、同時に3役の声を出すわけではないのですが、いかに『アンパンマン』が山寺さんの声で支えられているかがわかる珍事件でした。もしカバオくんが居合わせていたら……それはもうスタッフが遊んでいるとしか思えない事態です。
「焚き火」の音すら担当する山寺さんです。耳をすまして聴こえる風の音、本当に風ですか? 山寺さんの声だったり、しませんか?
(片野)