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「実は私も!」マンガを描いていたアイドル、芸人、文豪たち 意外だったデビューの経緯

小説より先にマンガを描いていた文豪も

子どもたちの無邪気なエピソードがほろりと泣けると評判の『パパは漫才師』(小学館)
子どもたちの無邪気なエピソードがほろりと泣けると評判の『パパは漫才師』(小学館)

●家族のほっこり話を描く関西芸人……「シャンプーハット」恋さん

 関西で絶大なる人気を誇る漫才コンビ「シャンプーハット」の恋さん(2021年11月に「こいで」から改名)は、2018年から3年間、ウェブコミック配信サイト「サンデーうぇぶり」で『パパは漫才師』というマンガ連載をしていました。妻と3人の子どもたちとのほっこりとした日常が好評で、単行本全7巻にまとめられた大人気作です。

 小さい頃からマンガが好きだった恋さん。漫才のネタをマンガにしたら面白そうだと出版社に持ち込んだところ、すんなり連載が決まったのだそうです。その際、出版社から提案されたのが、当初考えていたギャグマンガではなく子育てマンガだったのですが、実は恋さんには子どもネタのストックもありました。

 大きくなったときに聞かせようと、子どもたちのエピソードもネタ帳に記していたそうなのです。そんな受け狙いではないほっこりエピソード満載のマンガを読んで、思わずほろりとする芸人仲間が続出。子を持つ親にとっては、子育てあるあるは、まるで我が子のことのように感じられるんでしょうね。

 ちなみにマンガのアシスタントを担当したのは後輩芸人。背景はイラストの仕事も多い森本大百科さんが、トーンと色つけはお笑いコンビ「蛙亭」の中野周平さんが行っていたそうです。

●漫画家の顔も持つ文豪……筒井康隆

 SFからスラップスティック、ジュブナイル、推理小説、実験小説など、幅広いジャンルの作品を発表し続け、俳優としても活躍する、多才すぎる文豪・筒井康隆さん。その多才の一角に、漫画家の顔もあります。

 幼少期に田河水泡の『のらくろ』に熱中したという筒井さんは、小学生の頃から自分でもマンガを描いていたそうですから、小説執筆よりもマンガ歴の方が長いことになります。さらに中学生になると手塚治虫作品に夢中になり、マンガ雑誌「漫画少年」に投稿もしていたそうです。

「漫画少年」の投稿者には赤塚不二夫さん、藤子不二雄さん、楳図かずおさんなど、のちに漫画家になった人も数多くいます。また、小松左京さん、眉村卓さん、平井和正さんなど、その後筒井さんとともに日本SF界の礎を築くことになる面々も投稿者に名を連ねていました。「漫画少年」は、表現者たちの若い情熱が集まる場だったのでしょう。

 そんな筒井さんの作品は、自身のSF小説をマンガ化した作品(逆にマンガが先でのちに小説化したものも)や、新撰組をとりあげた『わが名はイサミ』などの歴史モチーフものなど、味わいもさまざまで、小説同様すべて読み通してみたくなります。

 大注目のマンガ界には、今後も他ジャンルから新しい才能が入ってくることでしょう。どんな作品と出会えるのか、ますます楽しみですね。

(古屋啓子)

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