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『鬼滅の刃 遊郭編』で感じる、炭治郎・伊之助・善逸の成長 「三人なら勝てるぜェイ!」

TVアニメ『鬼滅の刃 遊郭編』では、炭治郎、伊之助、善逸の同期3人の成長も見どころのひとつです。煉獄さんの死で、自分の無力さを思い知った彼らは、傷が癒えると、それまで以上に厳しい鍛錬に励み、心身ともに成長。彼らが「遊郭編」で見せた成長について4つのポイントから紹介します。

初めての「3人の共闘」で見られる成長

炭治郎、伊之助、善逸の成長も注目ポイントの、TVアニメ『鬼滅の刃 遊郭編』第2弾キービジュアル (C)吾峠呼世晴/集英社・アニプレックス・ufotable
炭治郎、伊之助、善逸の成長も注目ポイントの、TVアニメ『鬼滅の刃 遊郭編』第2弾キービジュアル (C)吾峠呼世晴/集英社・アニプレックス・ufotable

 放送中のTVアニメ『鬼滅の刃 遊郭編』では、上弦の陸との戦いのなかでの炭治郎、伊之助、善逸の同期3人の成長も見どころのひとつです。

「無限列車編」では、炎柱・煉獄杏寿郎と上弦の参・猗窩座(あかざ)の戦いをただ見ているしかなく、自分の無力さを思い知った彼ら……。傷が癒えると、それまで以上に厳しい鍛錬に励むようになりました。

 炭治郎は、煉獄さんの弟・千寿郎(せんじゅろう)に「杏寿郎さんのような強い柱に必ずなります」と誓い、善逸は単独での任務に行く時も「駄々をこねなく」なり、伊之助は猪突猛進に磨きをかけながら、人としての心も育っていきます。煉獄さんの存在とその死は、彼らの心と剣士としての力を大きく成長させました。

 この記事では、煉獄さんの死の悲しみを乗り越え、初めて上弦の鬼と対峙した炭治郎、伊之助、善逸が「遊郭編」で見せた成長について考えます。

※この記事では、まだアニメ化されていないシーンの記載が含まれます。原作マンガを未読の方はご注意ください。

●柱への反抗

 炭治郎、伊之助、善逸の3人は、蝶屋敷から神崎アオイを連れ去ろうとしていた音柱・宇髄天元を前に、自ら志願するような形で遊郭に乗り込むことになります。

 炭治郎の場合、相手が柱であろうと誰であろうと彼自身が納得しない限り、抵抗を見せるのはごく普通なことです。そのため、炭治郎が蝶屋敷の少女たちと一緒になって天元に抗議するのは、まったく不思議ではありません。「てめーら コラ!! 誰に口利いてんだ コラ!! 俺は上官!! 柱だぞ この野郎!!」と怒鳴られても、「お前を柱とは認めない!! むん!!」と、頬を膨らませるのも、炭治郎なら「普通にあり」です。

 しかし、このシーンでは伊之助と善逸も炭治郎と一緒に天元に歯向かいます。伊之助は、これまで猪突猛進な野生児で、常に自分がトップでいたい俺様キャラでしたが、ここでは「今帰った所だが俺は力が有り余ってる 行ってやってもいいぜ!」と、アオイの身代わりになろうとするのが新鮮です。
 
 そして、ヘタレな善逸も、ガクガク震えながらではあっても、「たとえアンタが筋肉の化け物でも俺は一歩もひひひ引かないぜ」と啖呵(たんか)を切り、天元にすごまれてもなんとか耐えきり、男気を見せます。伊之助と善逸、ふたりのこれまでとは違う成長を感じさせるシーンです。

●遊郭で見せた「内面の成長」?

 とんでなくブサイクな女装で遊女屋に潜入させられた3人は、それぞれ内面の成長とも言える「頑張り」と「我慢」を見せます。

 素直で働き者な炭子(=炭治郎)は、変顔になりながらも苦手な嘘をついて、行方不明になった天元の妻の情報を聞き出そうと頑張ります。

 猪子(=伊之助)は「建物の中で暮らす」「着物を着る」「喋らない」という、彼にとっては拷問に近いことを我慢しながら、不自由ななかで情報収集につとめるのです。そして鬼の存在を確信しても、いきなり単独で行動はせず、炭治郎との約束を守って行動を控えるといった、チームワークを尊重した行動も見せます。

 そして、善子(=善逸)は花魁に化けた上弦の鬼に遭遇。息も止まりそうな恐怖のなか、耳を引っ張って叱りつけ、女の子を泣かせた上弦の鬼の手をつかみ、「手 放してください」と歯向かう勇気を発揮します。いつものヘタレの善逸とは別人のような頑張りようでした。

●上弦の鬼に、ひるまない!

 上弦の陸・妓夫太郎の毒の攻撃を受けた天元の助太刀に現れたのは、気合十分で謎のポーズをキメた伊之助と、女装のまま寝ている状態の善逸でした。さらに、炭治郎が天元の前に、彼をかばうように現れたのです。

 煉獄さんと猗窩座の戦いの際には、動くことすらできなかった炭治郎と伊之助。煉獄さんの言葉を胸に、歯を喰いしばって前を向き、厳しい鍛錬を積んできた彼らには、相手が上弦の鬼であろうと迷いはありませんでした。炭治郎はこう心に誓っています。「まだやれる まだ動ける 今度は 戦い抜く 最後まで!!」と……。

●戦闘能力の大幅アップ!

 煉獄さんの死から、いっそう厳しい鍛錬を重ねてきた3人は、戦闘能力も格段にアップしています。

 炭治郎は、水の呼吸とヒノカミ神楽とを合わせて使う方法を編み出し、「水の呼吸より攻撃力はあがり ヒノカミ神楽よりも長く動ける」ことに気付きます。そして、これまでの鬼殺隊の剣士たちも、「最も自分の力が発揮できる形」に呼吸を変化させてきたからこそ、呼吸にはさまざまな型が生まれたのだと思い至るのです。さらに、戦いのなかで額の痣(あざ)が濃くなり、それによって桁違いの戦闘能力を発揮します。

 伊之助は戦い方の変化に成長を感じます。上弦の陸との戦いは、初めての3人の共闘でもあり、妓夫太郎と堕姫のふたりの頸(くび)を同時に斬るとなると、これまで以上にチームワークが重要です。

 野生のイノシシに育てられ、強さだけを価値基準にして生きてきた伊之助は人間社会の常識やマナーなどを知らず、人の優しさや仲間意識についても分かっていませんでした。しかし、炭治郎や善逸、禰豆子、柱たち、蝶屋敷の少女たち、そして藤の家のおばあさん・ひささんと関わるうちに、伊之助は内面的に大きく成長。上弦の陸との戦いでは、「三人なら勝てるぜェェェイ!!」という言葉が出るほど、仲間を信頼するようになったのです。

 眠りながら戦う善逸は、彼が唯一使える「雷の呼吸」の6つの型のうちのひとつ、「壱ノ型 霹靂一閃」を「八連」と「神速」に進化させて上弦の陸・堕姫を追い詰めます。また、伊之助に「お前 なんかすごいいい感じじゃねーか!! どうした!?」と言われるほどの頭のキレ具合も発揮し、ほれぼれするような成長ぶりでした。

 来るべき最終決戦に向けて、剣士としてだけではなく、人としても炭治郎、伊之助、善逸は成長を続けます。その成長こそ、『鬼滅の刃』のテーマのひとつであり、私たちは彼らの懸命な姿に心打たれるのです。

(山田晃子)

※煉獄の「煉」は「火+東」が正しい表記

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