『ジュウレンジャー』放送30周年 海外進出も実現、ヒーロー番組の歴史を変えた作品
30周年を迎えた『ジュウレンジャー』。今や人気モチーフとなった「恐竜」を初めて使い、6人目の戦士を定番化した意欲作です。その人気は国内だけにとどまらず、アメリカでも『パワーレンジャー』として大活躍しました。
原点回帰を目指しながら、新たな要素を追加
本日2月21日は、30年前の1992年にスーパー戦隊シリーズ第16作『恐竜戦隊ジュウレンジャー』が放送開始した日です。シリーズのターニングポイントにもなったといわれる人気作について振り返ってみましょう。
前年に放送されたシリーズ第15作『鳥人戦隊ジェットマン』は、その作風から本来のターゲットである子供だけでなく、戦隊シリーズを知らない大人たちにも好評だった異色作でした。そこで本作は逆に、本来の視聴者層である子供に向けた王道的展開を目指した作品となります。
しかし、単にこれまでやってきたことと同じことをするのではなく、当時の子供に向けた新機軸で製作を目指しました。それこそが、従来の戦隊でモチーフにしなかった「恐竜」です。ターゲットである男子層に恐竜のオモチャが人気だったことは過去の例からもわかっていたものの、どこか悪役のイメージがあったことが二の足を踏んだ原因でした。
ところが、時代的には恐竜ブームが近くに迫っていたのです。この翌年に公開されるスティーヴン・スピルバーグ監督の『ジュラシック・パーク』が、恐竜モチーフの要因のひとつとなったという発言もありました。
もっともファンにはよくネタにされますが、実際にモチーフになったものには哺乳類や実在しない生物もいて、完全な恐竜モチーフというわけではありません。これには、すべて恐竜にするとシルエットが似てしまうという事情があったそうです。
この他にも、本作にはもうひとつのモチーフが隠されていました。それが当時の人気ゲームだった『ドラゴンクエスト』をはじめとする「RPG(ロールプレイングゲーム)要素」です。ヒーローたちの持つ武器や敵側のモンスターを見ると、そのことは一目瞭然です。これを加えることで、本作は従来の戦隊シリーズになかったファンタジー要素を盛り込みます。
そのため、合体ロボもそれまでの「兵器」という形から、「主人公たちを導く神」という存在になりました。これは本作がシリーズではじめての試みになります。このように、単純に原点回帰させるのではなく、新しい要素でシリーズをリフレッシュするという点が本作の人気につながったのでしょう。
もちろん原点回帰された部分も多々あります。たとえば、ナレーションはシリーズ第1作『秘密戦隊ゴレンジャー』から7本続けて担当した大平透さんを再起用。敵側のボスである魔女バンドーラは、特撮作品で悪役の多い曽我町子さんが演じています。この曽我さんの起用で敵側のイメージが独特の雰囲気を持つようになり、本作の魅力のひとつになりました。
また、それまでの「〇〇マン」といったタイトルを、原典である「〇〇レンジャー」とした点も見逃せません。それまでの「マン」は15作品中9作で、「レンジャー」は2作。圧倒的に「マン」が多かったのですが、本作をきっかけに「レンジャー」がほとんどを占めるようになります。以降の「マン」作品は、第22作『星獣戦隊ギンガマン』のみになりました。