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俳優・声優の納谷悟朗さん御命日 銭形警部を演じるきっかけは意外なところに

『ルパン三世』で銭形警部ではないキャラにキャスティングされていた?

「EMOTION the Best 宇宙戦艦ヤマト 完結編」(バンダイビジュアル)
「EMOTION the Best 宇宙戦艦ヤマト 完結編」(バンダイビジュアル)

 アニメに話を戻すと、納谷さんの悪役はそれほど多くありません。印象的だったのは『六神合体ゴッドマーズ』(1981~1982年)のズール皇帝くらいでしょうか。どちらかというと、筆者には老骨ながら頼もしいイメージがありました。

 なかでも『宇宙戦艦ヤマト』(1974年)の沖田十三艦長は、日本アニメの転換点となった作品だけに注目度も高く、名セリフも多いことで知られています。筆者と同世代であれば「地球か……何もかもみな懐かしい」と、マネをした人も多いことでしょう。

 また、納谷さんがナレーションを担当した作品は印象深いものが多くありました。『愛の戦士レインボーマン』(1972年)、『新造人間キャシャーン』(1973年)、『仮面ライダーアマゾン』(1974年)など、納谷節ともいえる語り口調が独特なものでした。

 そして、そんな納谷さんの代表作と言えば、「ルパン三世」(1971年)シリーズの銭形警部と答える人も多いことでしょう。

 実は納谷さんは製作当初、石川五ェ門役にキャスティングされていました。それは納谷さんが一番ハードボイルドな演技ができるからだったそうです。しかし、納谷さんは「セリフが少ない」からという理由で、銭形役を自ら希望しました。

 原作マンガに比べて銭形にギャグが多いのも納谷さんの発案だそうで、わざとダミ声で演じていたことなど、銭形というキャラをより魅力的に作ったのも納谷さんの功績です。もしも、納谷さんが当初の予定通り、五ェ門を演じていたら『ルパン三世』どころか日本のアニメの歴史も大きく変わっていたことでしょう。

 納谷さんは2010年放送のTVスペシャルまで39年の間、銭形を熱演し、これは2021年に惜しくも勇退した次元大介役の小林清志さんに次ぐ長さになります。

 初代ルパン三世役だった山田康雄さんとは吹き替え作品でも共演が多かったことから大変に仲が良く、よく一緒にお酒を飲んでいました。それゆえ、1995年に山田さんが亡くなった際、葬儀で弔辞を読んだそうです。その時、銭形の口調で「おい、ルパン! これから俺は誰を追い続ければいいんだ!」と、涙ながらに遺影に語りかけました。

 その納谷さんが亡くなった時、そのお別れ会で山田さんからルパン役を引き継いだ栗田貫一さんは、ルパンの口調で「とっつあん、さみしいねぇ、ずっと追いかけてもらいたかったぜ」と惜別の言葉を送ったそうです。

 ルパンと銭形の不思議な縁はアニメの世界から飛び出て現実のものとなった。そんな風に思えるエピソードです。

 もちろん、生前の納谷さんが命を吹き込んだキャラは他にもいますので、これからも残されたそのお声を聴かせてもらえればと思います。

(加々美利治)

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