マンガ実写化映画で「ラスボス」になった、意外なキャラ4選 ゾンビものでは特に珍しい?
マンガ原作の実写映画では、長大な原作をすべて映像化できない場合に、原作では物語途中で倒されたキャラがラスボスとして描かれる……といったケースもしばしばあります。今回はそのなかでも、特に「え、この人が?」と観客を驚かせながらも、ラスボスとしていい働きを見せたキャラを紹介します。
坂口拓演じるラスボスが圧巻

人気マンガの実写化映画では、長い原作全てを1本の映画にするわけにもいかないので、原作の意外なキャラが「ラスボス」扱いで描かれることも少なくありません。今回はそんななかでも、俳優の演技や演出で上手く「ラスボス戦」を盛り上げた4人を紹介します。
●『キングダム』(2019年)の左慈
まずは、映画2作目の公開も決定しており、近年の実写化作品の成功例として評価されている『キングダム』。原作序盤の「王都奪還編」までを映画化した内容で、主人公・信(演:山﨑賢人さん)の前に最後に立ちはだかったのは、王弟・成きょう(きょうの字は「虫へんに喬」 演:本郷奏多)を守る元将軍・左慈でした。演じたのは零距離戦闘術の達人「ウェイブマスター」の称号も持つ、日本を代表するアクション俳優・坂口拓さんです。
原作における左慈は、王宮の抜け道「右龍」で信が戦う中ボスで、山の民を両断する強者ながら、自分の強さを過信しすぎて信に斬られてしまう人物でした。しかし、風格たっぷりな坂口さんが演じたことで、原作よりも強者感が大幅に増しています。おまけにCGも早回しもなしで演じた坂口さんの殺陣は、カメラが追いきれないくらいのスピードとキレで、山﨑賢人さんもリアルに恐怖を感じながら戦っているのがわかるくらいの圧倒的動きを見せました。
映画における左慈は、「戦場に夢は転がっていない」と、大将軍を夢見る信と対極に位置する強敵であり、彼を打ち破る場面はよりカタルシスが増しています。今後も実写化シリーズが続くのであれば、坂口さんには特例で王騎と戦う武神・ほう煖(けん・「ほう」の字は广部に龍)の役もやってほしいところです。
ちなみに、「王都奪還編」本来のラスボスだった怪物・ランカイは、その現実離れした風貌、巨大さ、動きもあって「登場しないのではないか」という懸念もありましたが、身長201cmの俳優・阿見201さんが特殊メイクを使って演じ、中ボスとして見事スクリーンに再現されました。
●『アイアムアヒーロー』(2016年)の陸上ZQN
『アイアムアヒーロー』は花沢健吾先生の同名マンガを実写化した、本格ゾンビアクション映画です。原作を巧みにまとめた脚本、大泉洋さんはじめキャストの演技、R15指定のさらにギリギリを攻めた人体破壊とゾンビ特殊メイクなどが高く評価され、シッチェス・カタロニア国際映画祭の観客賞と最優秀特殊効果賞を受賞するなど、海外でも好評を博しています。
そんな同作は、原作のゾンビ(ZQN)の怖さの再現度もさることながら、普通のゾンビ映画ではまずない「ラスボス戦」が描かれた点でも、観客の度肝を抜きました。他作品のゾンビよりも「生前の人格を反映した言葉を発する」など、少し個性強めな設定を活かし、原作の「アウトレットモール」編でも印象的だった「陸上ZQN」(特に「高跳び」の場面が凄い)が、最後に主人公・英雄の前に立ちはだかるのです。
元陸上選手ゆえに他のZQNたちとは一線を画す「陸上ZQN」は、散弾銃を持つ英雄をも翻弄。頭を半分以上吹き飛ばされてもまだ立ち上がるゴキブリ級のタフネスを見せ、ゾンビ映画史に残る名勝負を盛り上げました。佐藤信介監督のインタビューによると、「陸上ZQN」を演じたのは、アウトレットモールの撮影で行った韓国ロケでのオーディションで発見した韓国の学生さんとのこと。名前もわかりませんが、あの存在感と身のこなし、ただ者ではありません。