30周年『セーラームーン』TVアニメがヒットした理由 『エヴァ』にも影響を与える
国外にも多くのファンを生んだ伝説のアニメ『美少女戦士セーラームーン』。その熱気は30周年を迎えた現在でも色あせることはありません。しかし、誕生から日本国内を巻き込んだ大ヒットまでにはさまざまな苦労がありました。
月の光に導かれた新ジャンルの先駆者

30年前の1992年3月7日は、TVアニメ『美少女戦士セーラームーン』が放送開始された日です。その大ヒットは国内だけにとどまらず、海外にも及び、日本TVアニメの代表作と言えるほどの知名度となりました。
本作は「セーラー服の美少女が戦うアクションもの」というコンセプトで、武内直子先生が描いた読み切りマンガ『コードネームはセーラーV』が原点です。この作品のアニメ化を企画した東映動画(当時)との話し合いの結果、『セーラーV』をアニメ用に練り直して誕生したのが本作『セーラームーン』でした。
このため、マンガとアニメが同時進行するということになります。そこでアニメではマンガを原作としながらも、独自の展開で物語を進めるという方向になりました。それゆえマンガは前世からの宿命と恋愛という少女マンガに沿った展開が中心となりますが、アニメではギャグも織り込んだ、笑いありバトルあり感動ありといったエンターテイメントに徹した物語が中心になっていきます。
この比較的、原作の流れをなぞりながらもアニメ独自の面白さを追求する方針は、結果的により多くのファン層の獲得に成功しました。しかし、本作は最初から大ヒットしたというわけではありません。ファンの熱は、1年の放送のなかで徐々に高まっていったのです。
その理由のひとつが、知名度のなかったことです。女の子による集団ヒーローものは本作が初めての試みだったので、一般の視聴者には内容が分からず絵を見ただけで敬遠するということもありました。そういう点では、まず本作はアニメファンから人気に火が付いた作品だったと思います。
また、当時の裏番組も強力で、TBS系列は長寿アニメ番組の『まんが日本昔ばなし』、フジ系列は『たけし・逸見の平成教育委員会』という人気番組で、この牙城を崩すのは容易ではありませんでした。
そのため、おもちゃの人気も当初はいまひとつだったそうです。ところが、この年の女の子系おもちゃで大ヒット商品となる「ムーン・スティック」が登場する辺りから急激な人気上昇をしました。このムーン・スティックは約42万個というかつてないほどの売り上げを記録し、女の子向けのアニメおもちゃは一定以上の売り上げを見込めないという玩具業界の常識を打ち破った商品と言われています。
この売り上げの高さから、本作は1年の終了予定で後番組が決まっていたにもかかわらず、異例の放送延長となりました。しかし、あまりにも急だったことからスタッフの確保が間に合わず、次回作『美少女戦士セーラームーンR』の最初の1クールはアニメオリジナルとなったそうです。