40年前、『ガンダム めぐりあい宇宙』公開の熱狂 セイラ入浴シーンで盗撮も…
40年前に大ブームを巻き起こした『機動戦士ガンダム』の劇場版最終作として公開された『めぐりあい宇宙』。そのクオリティは今でも語り継がれるレジェンド級の作品でした。当時のファンの熱狂と、同作が与えた衝撃がどのようなものだったのか、振り返りたいと思います。
劇場版第1作、第2作を超えたクオリティ
本日3月13日は、40年前の1982年に劇場版『機動戦士ガンダムIII めぐりあい宇宙(そら)編』が公開された日です。ガンダムシリーズ第1作『機動戦士ガンダム』の最後の物語となる本作について、当時の出来事を交えて振り返ってみましょう。
富野由悠季(当時は富野義幸名義)監督の発案により、TV版の分割編集という前代未聞の展開で公開が決まった『ガンダム』の映画化。当初のアイデアでは4部構成にして、最後にTV版の打ち切りでカットされたエピソードを加えることも考えられました。
しかし続編自体、劇場版1作目の興行次第……という配給元・松竹のスタンスは変えられず、先の見通しがつかなかったことから3部構成でスタートすることになります。さらに劇場版1作目から連番を示す「I」と、サブタイトルをつけることを富野監督は望んだそうですが、それも許されませんでした。
ところが、劇場版第1作は前売り券発売の時点で大ヒットが予想される好評で、公開前に第2作の制作が決まります。そして、1981年3月14日に全国松竹系にて公開された第1作『機動戦士ガンダム』は9億3700万円の配給収入を叩き出しました。
こういった経緯から、次なる大ヒットが確定的となった劇場版第2作『機動戦士ガンダムII 哀・戦士編』は、第1作以上のフィーバーぶりでマスコミでの扱いも大きくなり、関連商品も大幅に売り上げを伸ばします。そして1981年7月11日に公開され、配給収入は7億7000万円をあげました。
そして、いよいよ最終作となる本作『めぐりあい宇宙』の公開となります。本作はそれまでのTV版の再編集作品に過ぎなかった前2作に比べて、大幅に手を加えられた映画として生まれ変わりました。
まず、新作カットの量。本作の新規作画シーンは75%におよんでいます。これにはTV版の時、病気により途中で倒れたキャラクターデザイン担当の安彦良和さんのリベンジという理由もありました。その結果、TV版はもちろん、劇場版前2作をも上回る作画クオリティになります。
さらにTV版では安彦さんがキャラデザインできなかったフラナガンをあらためてリファインし、小説版が初出でTV版には出ていないダルシア・バハロ首相や、ギレン・ザビの秘書であるセシリア・アイリーンをデザインしていました。
この安彦さんの新規作画シーンは公開前から評判が高く、アニメ雑誌などで紹介されるたび、「今度の劇場版はオール新作なのでは?」と、ファンが誤解するほどに期待値を上げます。この劇場版の予告編を見るためだけに映画館前のモニターを飽きもせず見ていた人も多くいました。もちろん当時の筆者もそのひとりです。
この他にも、TV版のようにオモチャのセールスを気にしないでよくなかったことから、宇宙戦に似合わないガンタンクをオミットして、2機のガンキャノンを登場させました。それぞれ「108」と「109」のマーキングを加えた本作だけの仕様で、これは小説版からの設定になります。
さらに前作『哀 戦士』からGファイターに代わって登場することとなったコア・ブースターも「005」と「006」というマーキングがされました。こういったTV版では作画の関係でオミットされていた細かい描写が加わったことで、劇場版の作画密度は格段に上がっていたといえるでしょう。