40周年『ミンキーモモ』 打ち切りから延長へ…誤解されがちな裏事情とは?
第2次魔法少女ブームの始まりと言われている名作『ミンキーモモ』。その人気は対象の女児層だけでなく、アニメファンをも巻き込んだヒットとなりました。しかし、その製作裏には複雑な事情があったのです。
誤解されがちなブームの背景とは?

2022年3月18日、1982年に放送開始されたTVアニメ『魔法のプリンセス ミンキーモモ』が40周年を迎えました。本来のターゲットである女児層以上に、当時のアニメファンから大きな支持を得た本作は、その数奇な運命ゆえに「魔女っ子もの」というジャンルとしては異例のエンディングを迎えることになりました。
本作でまず特筆される点は、それまで圧倒的なシェアを誇っていた東映動画(現在の東映アニメーション)以外で魔法少女アニメ、いわゆる「魔女っ子もの」を初めて製作したことです。この時期の東映動画の少女系アニメは、マンガ原作のアニメ化という方向にシフトしており、「魔女っ子もの」は休眠状態にありました。
これにより本作が一定の成功を収めたことで、第2期魔法少女ブームという流れが起き、後年に『魔法の天使クリィミーマミ』をはじめとする作品が生まれていきます。明確なシリーズではありませんが、その多くは女の子が魔法で成長して大人になるという作風で、女の子の大人への憧れ、将来の夢といったものへの希望を感じさせる作りとなっていました。
この大人への変身シーンをバンクにして、見どころのひとつにしたのも本作が後の作品に影響を与えたことです。長い呪文とダンスを思わせる華麗な動き、当時の新体操ブームに影響されたこのシーンは人気となりました。
本来のターゲットである女児層にも人気の高い作品でしたが、前述したように本来なら対象としていない層にも注目された作品となります。その理由はいくつか考えられます。
まず製作陣に、当時の人気作だった『戦国魔神ゴーショーグン』からのスタッフが多かったこと。総監督は湯山邦彦さん、原案・構成は首藤剛志さんというコンビは、この後にも多くの名作を生み出しますが、最も知られたアニメとして『ポケットモンスター』があります。
さらに、主役のミンキーモモを演じ、主題歌を歌うのは当時の人気声優であった小山茉美さん。こういった『ゴーショーグン』からの流れでアニメ雑誌での扱いも最初から大きく、アニメファンの注目を早い段階から集めていました。
そして当時の世相として、『うる星やつら』のヒットによる美少女アニメブームが始まりつつあったことです。たとえば過去作品の『ルパン三世 カリオストロの城』のクラリス、『女王陛下のプティアンジェ』のアンジェといった美少女キャラが取り上げられ、この年の「月刊アニメージュ」4月号付録に「ロリコントランプ」という美少女キャラの絵によるトランプも世に出ました。
この「ロリコン」という言葉が広く世に出回り始めたのもこの時期で、同人誌即売会が大きくなってきたことから成人向けパロディの二次創作の同人誌が出回り始めます。これに合わせるように成人用美少女雑誌も創刊され、この数年後には「美少女アニメ」と言われる18禁アダルトアニメも製作されるようになりました。
こういった時期と重なったことにより、本作の評価はそういった時代とは切り離して語ることが難しく、本作を誤解する人も少なくないでしょう。特に当時を知らない世代は、伝聞による誤解をそのまま受け入れることもあります。
しかし本作を見てきた世代には、いかに作品の内容がバラエティ豊かであることを知っていることでしょう。そして、本作がジャンル以上に印象的な作品になったことも覚えていると思います。