『未来ロボ ダルタニアス』が残した「胸にライオン」のインパクト 超合金は今も愛され…
戦後の日本を想起させる描写も…
いま振り返ると興味深いのは、本作の舞台設定かもしれません。本作の舞台は、なんと1995年の日本なのです。ダルタニアスが活躍した時代から、すでに27年もの時が過ぎていることに驚かされます。
作品の冒頭では、謎の敵によって世界中が滅亡の危機に瀕しており、日本も軒並み焼き尽くされ、焼け野原となっています。生きのびた人びとはヤミ市で高価な食料を羨望の目で見つめながら雑炊をかきこむ生活を余儀なくされており、敗戦後の日本社会を連想させるような描写がなされています。
1970年代後半は、実際に戦争や戦後を体験した世代が社会の第一線で活躍しており、おそらくは制作スタッフが実際に見た光景も描き込まれていたのでしょう。
人類を追い詰めた謎の敵は、後に「ザール星間帝国」であることが明らかになります。主人公の楯剣人(たて・けんと)もザール帝国の攻撃により家族を失った少年ですが、苦しい生活のなかでも明るさを失わず、孤児たちの面倒を見ながらたくましく生きています。
そんな剣人はある日、かつてザール帝国に滅ぼされたエリオス帝国の再興を目指すアール博士の拠点、アダルス基地に迷い込み、巨大な人型ロボット「アトラウス」のパイロットに選ばれます。
「アトラウス」は重戦闘機「ガンパー」、ライオン型サイボーグの「べラリオス」とともに、「ダルタニアス」へと合体し、剣人と仲間たちは、ザール帝国との激しい戦いへと身を投じることとなったのです。
3体のメカの合体シーン、特にべラリオスがダルタニアスと合体し、ライオンの顔が胸となるシーンは、堀江美都子氏が歌い上げるオープニングテーマ「ダルタニアスの歌」にも登場し、見る者に強烈な印象を残しています。
その後、アニメや特撮でライオンの顔が胸に備えられたロボットは多数登場していますが、ダルタニアスこそがそれらの先駆けであり、後世に与えた影響は大きかったといえるでしょう。
ストーリーの面でも、剣人が後にエリオス王家の末裔であることが判明し、剣人の父親とザール帝国の地球侵略部隊総司令官であるクロッペンを交えた因縁なども描かれ、複雑なストーリーが展開されます。長浜監督降板後は佐々木勝利氏が引き継いで、無事に完結まで導きましたが、若干子供向けの演出となっていたため視聴率は芳しいものではありませんでした。
一方、当時としては5800円と高額だった「DX超合金 未来合体ダルタニアス」は好調な売れ行きを見せ、ロボット玩具の高級化の先鞭をつける形となったのは、特筆すべき点でしょう。
2000年代となってもダルタニアスの超合金製品は発売され続けており、2011年には完全新規設計の「超合金魂 GX-59 ダルタニアス」が、2020年にはリニューアル版となる「GX-59R ダルタニアス」が発売されています。長浜監督が最後に遺したロボットは、40年の時を経てもなお、愛され続けているのです。
(早川清一朗)