ヨーロッパ史が学べるマンガを時代別に紹介!戦い、恋愛を通して身につく政治、文化の知識
激動の歴史はマンガの格好のネタ
●ルネサンスが学べるマンガ
中世後期に続くダ・ヴィンチ、ミケランジェロなど人類史に残る大芸術家が生まれた「ルネサンス」期です。「再生」「復活」を意味するこの時代、西洋史は停滞から進化の時代に入ります。
そんな16世紀のイタリアを舞台に、没落貴族の少女が芸術家として成長していく朝ドラのような爽やかな作品『アルテ』では、ルネサンス文化が活き活きと描かれています。男尊女卑の激しかったこの時代でも、アルテのような女性芸術家は、実際にいました。劇中の描写からアルテは1506年生まれであることがわかりますが、女流画家のレヴィーナ・テイルリンクは1510年生まれ。『アルテ』の設定は、まったくの絵空事ではないことがわかります。そういったリアリティも魅力ですね。
一方、この時代の文学を描いたマンガだと、『7人のシェイクスピア』が挙げられます。不世出の天才劇作家・シェイクスピアは誰もが知っている超有名人ですが、残した功績の大きさに反して、本人の記録は驚くほど少ない謎の人物です。真面目な学説ではありませんが、シェイクスピア別人説も数多く、同作ではシェイクスピアは7人の人物が成立させていたとの大胆な仮説に基づいて描かれています。宗教弾圧や陰謀などキナ臭い時代背景も、魅力的なエッセンスです。
●フランス革命が学べるマンガ
フランス革命は資本主義の発展、人権の保障などを確立した近代史の重要事件です。
そんな時代を描いた『イノサン』はフランス革命で暗躍した処刑人、シャルル=アンリ・サンソンを主人公にした作品です。サンソンは処刑人でありながら死刑廃止論者で、社会から蔑まれる立場でした。ハンサムで教養もあり、死刑囚の遺族からも感謝される優しい人柄だったとの記録が残っています。坂本眞一先生が圧倒的な画力で描いた同作は、エログロでありながら耽美的な傑作です。
●ヴィクトリア朝時代が学べるマンガ
ヴィクトリア女王統治下のイギリスは、世界の6分の1を支配下に置く全盛期でした。莫大な富は、多くの産業や文化を生み出しています。
今回紹介する『エマ』は、メイドのエマを主人公に身分違いの恋とヴィクトリア朝イギリスの文化を描いた作品です。当時の風物を淡々と描きながら、階級社会の闇も描いています。身分違いの恋はヴィクトリア朝の古典小説『ジェーン・エア』で題材になっており、そういった古典の息吹を感じるのも素晴らしいです。
この時代は世界一有名な探偵シャーロック・ホームズの活躍した時代でもあり、ホームズ作品のアレンジでも舞台になります。最近の作品だと、ホームズの宿敵モリアーティ教授を主人公にした『憂国のモリアーティ』、ホームズが「有名人」として劇中に登場する『ノケモノたちの夜』などがその例ですね。
事実は小説より奇なりと言いますが、歴史上のさまざまな実在の人物、出来事はマンガネタの宝庫と言えるでしょう。
(ニコ・トスカーニ)