ネットがない時代の『ドラクエ』攻略法─ゲーム情報を集めた3つの手段とは?
今やほとんどの方がスマホを所持し、分からないことは検索すれば即解決。こうしたライフスタイルはゲーム攻略にも大いに役立っています。ですが、インターネットがなかった頃、プレイヤーはどのように情報を集めていたのでしょうか。初代『ドラゴンクエスト』の時代を振り返り、当時はどんな形で情報を収集したのか紹介します。
初代『ドラクエ』の攻略情報を、オフラインで集めた少年少女たち!
ゲームプレイの進行で詰まった時、多くの方はスマホやPCを使い、インターネット上で攻略情報を探します。ですが、インターネットが普及する前は、どうやって攻略情報を集めていたのでしょうか。
国民的RPGとして知られている『ドラゴンクエスト』。そのシリーズの原点となった第1作目が登場したのは、今から35年以上前の1986年5月のこと。インターネットが一般的に広まる前の時代に、当時の少年少女たちはどうやって『ドラゴンクエスト』の攻略情報を手に入れていたのか。気になる当時のプレイ環境を、一ユーザーの視点から振り返ります。
●休み時間に飛び交う攻略情報! 時には、別のクラスにまで突撃
ゲームの攻略情報は、コミュニティから生まれることも多々あります。この点は、今も昔も変わりません。ですが、初代『ドラゴンクエスト』(以下、ドラクエ)が登場した頃のコミュニティといえば、身近な人間関係──つまり、学校の友達などのつながりが最大派閥でした。
自分よりも『ドラクエ』を進めている友達がいれば、こちらが詰まっている場所もクリア済みなので、有力な情報が手に入る可能性は高め。また、『ドラクエ』はゲーム進行がわりと自由なため、互いに足りない部分を補い合えた点も、情報交換の盛り上がりに拍車をかけます。
しかし、一部には情報を出し渋ったり、わざとウソの攻略を流したりする者もいて、、友達からの情報収集も一筋縄ではいきません。情報を精査するにも、インターネットと違いリアルな友人だけではサンプル数が少ないため、的確な判断を下すのは至難の業。その結果、まんまと騙された経験も少なからずありました(「ロトのよろい」の在処を偽った友人よ、タンスの角に小指をしこたまぶつけたまえ!)。
休み時間のたびに『ドラクエ』の話題で盛り上がり、「もうクリアしたヤツが別のクラスにいるってよ!」と噂を聞けば、知り合いでもないのに突撃したことも。当時の少年少女にとっての学校は、ゲーム攻略の情報を集める貴重な場所でもありました。
●友達だけでは埋められない情報は「本屋」にあった!
ゲーム雑誌や攻略本は、今もプレイを助けてくれます。しかし、攻略本が出るのは人気の高いゲームに限られますし、雑誌の攻略記事はネット上に飛び交う情報の速さにかないません。そのため、令和のゲームシーンではやや重要度が落ちる面もあります。
ですが、インターネット普及前だと話は大きく変わります。ゲーム雑誌に掲載される攻略情報は、同時期に広く伝わる最も大きな手段でした。その強みは雑誌側も把握しており、何週間にもわたって人気作の攻略情報を出し続けたことも。また、当時流行っていた「裏技」も、雑誌を通して多くのユーザーに広がった一面があります。
ゲーム雑誌が攻略情報に熱を入れていた証のひとつは、付録の存在です。かつてのゲーム雑誌には、攻略情報をまとめた小冊子が付録になることも多くありました。攻略の要点やマップ、RPGなら武器や防具の情報などが記載されており、こうした付録をファミコンの隣に置いてプレイしたものです。
また、攻略本のラインナップは今よりも多彩で、ちょっとマイナーなゲームの攻略本もごく普通に発売されていました。『ドラクエ』はもちろん人気ゲームなので、「公式ガイドブック」や「完全攻略本」など複数の攻略本が出ていましたが、当時のファミコンユーザーでもあまり知らないようなゲームの攻略本も出版されています。
例えば、ファミコン時代のシューティングゲームといえば『ゼビウス』(1984年)や『グラディウス』(1986年)などが有名ですが、当時ファミコン少年だった方でも『ガーディック外伝』(1988年)はあまり知られておらず、筆者の周りでもほぼ皆無でした。しかし、マイナー寄りな『ガーディック外伝』の攻略本もちゃんと発売されており、改めて振り返っても当時のラインナップの豊かさには驚かされます。
ちなみに『ガーディック外伝』はアクションシューティングゲームの要素もあり、一粒で二度美味しいタイプのゲームでした。ファミコン時代は複数のジャンルにまたがるゲームも珍しくなく、攻略本の重要性がより高い時代でした。
●最も信頼できる情報は、一番身近にあった!? 世界にひとつだけの攻略情報
友達との情報交換、攻略情報が充実していたゲーム雑誌、ラインナップ豊かな攻略本。いずれも重要な手段でしたが、信頼感と利便性を両立したとびきりの情報源がひとつありました。それは、自分で書き溜めた攻略ノートです。
実際のプレイで得た知識をノートに記し、必要な時に振り返る。これほど信頼できる攻略情報は他にありません。住人のセリフからヒントを見つけ、迷いやすいダンジョンは手書きでマッピング。欲しい武器はどの街で売っていたのか、そんな情報だって残せます。
また、自作ノートの大事な使命のひとつが、「ふっかつのじゅもん」の書き写しです。当時のファミコンソフトはプレイしたデータをそのまま保存する術がなく、ゲームの進行状況をパスワード化し、それを再プレイ時に入力して継続的なプレイを実現しました。このパスワードを『ドラクエ』では「ふっかつのじゅもん」と呼び、画面上に表示された20文字の「ふっかつのじゅもん」を書き留めたノートは、現在のセーブデータに匹敵する重要な存在でした。
ゲームプレイを通し、自分でかき集めた情報をまとめた攻略ノート。それは世界にひとつだけの攻略本であり、唯一無二のセーブデータだったのです。
この「ふっかつのじゅもん」は続編にも採用されましたが、バッテリーを用いたバックアップが普及し、3作目では「ふっかつのじゅもん」そのものが不要に。また、攻略本のラインナップは時代の変化に合わせて絞られ、ネットの普及によって膨大な攻略情報がスピーディに拡散されていきます。
今や検索するだけで必要な情報がたやすく手に入り、利便性の高さは当時と比べるまでもありません。その発展を喜ぶとともに、不便さが「思い出」につながったかつての日々を、どこか懐かしく感じます。現在の便利さもいつか思い出になる日が来るのかもしれませんが──きっとその時が来ても、多くの方々がゲームを心から楽しんでいることでしょう。
(臥待)