胸アツ、マンガ界の兄弟愛3選 冷酷な男にも不器用な愛
兄弟っていいなと思わせてくれる
●お互いを思いあう姿に胸アツ…『鋼の錬金術師』のエルリック兄弟
『鋼の錬金術師』のエドワード(エド)・エルリックとアルフォンス(アル)・エルリック兄弟は、お互いを思いあう姿がいじらしくさえ思えるふたりです。
亡くなった母を生き返らせようと、最大の禁忌とされている人体錬成を試みて、あえなく失敗したエルリック兄弟。その際、兄のエドは左足を、弟のアルは身体のすべてを「真理の扉」の向こうに持って行かれてしまったのですが、エドは、自らの右手と引き換えに錬成を行い、弟アルの魂だけは鎧に定着させました。話すことも動くこともできるけれど、空っぽの鎧でしかないアル。食べることも眠ることもできず、仲間たちとは違う存在としてのさみしさを抱えることになったアル。ふたりはアルの肉体を取り戻すすべを求めて、旅に出ます。
しかしこの旅はアルにとっては、兄のための旅でもあるのです。「人体錬成はあきらめたけど、それでも兄さんはボクの身体だけでも元に戻そうとしてくれてる。ボクだって兄さんを元に戻してやりたい」。アルの静かな言葉が胸に響きます。
兄弟の絆が最も感じられたのは、ラスボスたる存在「お父様」との戦いでした。エドが絶体絶命に陥った時、アルは自らの魂を差し出してエドに右手を戻すのです。この世界から自分を消してでも兄を救いたいアル。そして「お父様」との戦いに勝利したエドは、アルを取り戻すために、かつて失敗した人体錬成に再び挑みますが……アルの代価としてエドが手放したのは、愛の深さにこれ以上なく胸アツにさせてくれるものでした。
●兄を守る決意に胸アツ…『青の祓魔師』の奥村兄弟
『青の祓魔師』の奥村燐と雪男は、人間と悪魔の王「魔神(サタン)」との間に生まれた双子の兄弟。双子といっても性格は真逆で、単純でけんかっぱやい兄の燐に対し、弟の雪男は物腰が柔らく冷静沈着。
性格だけではありません。勉強が苦手で授業中も落ち着かない燐に対し、雪男は成績優秀でスポーツも万能の優等生なのです。さらに、祓魔師としても超優秀。史上最年少の13歳で祓魔師の称号を得て、天才とも称されています。祓魔師の養成機関「祓魔塾」では高校1年の時から「対悪魔薬学」の講師も務め、燐の授業を受け持つ先生でもあるのです。こんな、いろいろ立場逆転の兄弟ですが、そこには雪男の深い思いがありました。
雪男は幼い頃から悪魔が見えたため、自分がサタンの子であることは知っていましたが、未熟児だったせいでサタンの力は継承していませんでした。一方、兄の燐はサタンの力を受け継いでいるため悪魔に狙われる存在。雪男はその兄を守るために祓魔を学び始めたのです。なんとけなげで心の強い弟なのでしょう。
ちなみに普段は冷静沈着でソフトな雪男も、怒ると素の粗い口調が出てしまうところは、やっぱり燐の双子の弟なんだな、と思えて、そこも胸アツです。
マンガのなかには他にもたくさんの胸アツな兄弟たちがいます。『鬼滅の刃』の不死川兄弟、『ジョジョの奇妙な冒険』に出てくる敵のオインゴ・ボインゴ兄弟などなど。兄弟だからこその愛を、感じてみて下さい。
(古屋啓子)