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2次元作品は陰謀論をどう描いてきたか ゲームの悪役にぴったりな世界を支配する組織…

フリーメイソン、イルミナティ、テンプル騎士団、人類の滅亡……こういった陰謀論はリアルとフィクションの両方を賑わせていますが、マンガ、アニメ、ゲームなどのサブカルチャーは陰謀論をどのように描いてきたのでしょうか?

フィクションと相性のいい陰謀論

陰謀論そのものな『MMR マガジンミステリー調査班』 1巻(講談社)
陰謀論そのものな『MMR マガジンミステリー調査班』 1巻(講談社)

 特定の出来事や状況について「邪悪で強力な集団による陰謀が関与している」という見方、いわゆる「陰謀論」は、現実世界では慎重に対応するべきものですが、人びとの好奇心や恐怖心を刺激する効果があるのもまた事実です。そして、多くのフィクション作品もまた「陰謀論」をネタとして取り入れてきました。今回は、「アニメ・マンガ・ゲームはどのように陰謀論を描いてきたか」について、一部の作品を例に紹介します。

●陰謀論そのものなマンガ 『MMR マガジンミステリー調査班』

『MMR マガジンミステリー調査班』は、20世紀末の日本で全国の青少年に不要な恐怖を与え続けた、陰謀論そのものみたいな少年マンガです。本作で通奏低音として引用されていたのは、20世紀末に一部の人々を騒がせた「1999年に人類が滅亡する」というノストラダムスの大予言です。ノストラダムスの予言は極めて抽象的に書かれているため、どうとでも解釈のしようがあり、主人公のキバヤシが強引なロジックで何でもかんでも人類滅亡に結びつけてしまう展開は創造的ですらありました(ノストラダムスの予言はあまりにも抽象的であるため、予言ではなく権力者の批判を巧妙に躱して書かれた風刺詩との説もあります)。

 一方で超常現象を科学的に解明しようとする展開も多く、一種の科学ドキュメンタリーとしての側面も持っていました。とりわけ印象的だったのは、狂牛病(BSE)の原因としてプリオン(特殊なタンパク質)を紹介していたことです。当時、プリオンは日本でまだ報告例がない新しい学説で、のちにプリオンが狂牛病の原因と断定されたため、結果的に『MMR』は時代を先取りしていたことになります (そして結局は人類滅亡に結びつける)。

 筆者は子供の頃に本作を読んで勝手に震えていましたが、ノストラダムスの大予言が大外れした今は笑って読めます。現代史の三面記事的な記録として、心の本棚に収めておきたいですね。

●バックグラウンドしての陰謀論

 前述の通り、陰謀論には邪悪で強力な集団が登場します。5pb.Gamesとニトロプラスによる「科学アドベンチャー」シリーズでは三百人委員会、『メタルギアソリッド』ではビルダーバーグ会議、『アサシンクリード』ではテンプル騎士団が世界を支配していることになっていました。フリーメイソン、イルミナティ、黄金の夜明け団なども陰謀論系フィクションの定番です。

 こういった団体は、それ自体を話の主軸にする場合より、バックグラウンドとして名前が採用されているケースが多いように思います。世界観の基本設計書として都合がいいのでしょう。

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