アニメ『みゆき』で描かれなかった原作の「結末」 声優に大ブーイングも?
『みゆき』を彩る名曲の数々

さて、『みゆき』を思い返すとき、必ずと言っていいほど脳裏によみがえるのが美しい旋律に彩られたオープニングとエンディングの数々です。
特に最初のエンディングテーマである「想い出がいっぱい」は中森明菜さんの「DESIRE -情熱-」や『ウルトラマンメビウス』のオープニングテーマなど莫大な数の名曲を生み出した鈴木キサブロー氏が作曲し、作詞は山口百恵さんのヒット作を数多く手がけ、2006年には紫綬褒章を授与された阿木燿子氏が提供しており、本作にかける製作陣の意気込みがうかがえるメンバーがセレクトされていました。
そしてボーカルは中沢堅司氏と赤塩正樹氏による音楽デュオ「H2O」が務めており、明るく爽やかでありながら悲しみが織り込まれた透明感のある歌声は高い評価を受け、当時の歌番組でも「想い出がいっぱい」が登場するシーンがしばしば見受けられました。
今でこそテレビ番組でアニメソングが扱われるのは当たり前の光景となっていますが、1980年代以前のアニメソングは童謡として扱われており、一段低いポジションの楽曲とみなされていました。「想い出がいっぱい」は杏里の「CAT’S EYE」と並び、アニメソングの地位を高めた初期の楽曲として、大きな意味を持つ曲なのです。
また、オープニングテーマである「10%の雨予報(テンパーセントのあめよほう)」は本来の歌詞で「everyday」となっている部分が「みゆき」に変更されており、「アニメの内容に合わせて詞を変更する」という極めて珍しい試みが行われているのも特筆すべきポイントです。
23話から最終話まで使用されたエンディングテーマ「Good-byeシーズン」も青春の日々を送りながらも、貴重な時間は間もなく終わりを告げようとしていることを示唆する名曲として、非常に強い印象を残しています。
恋愛重視のスタイル、ポップミュージックの多用など、現代のアニメにつながる重要な役割を担ったTVアニメの『みゆき』でしたが、アニメの最終回が放送された時点でまだ原作は連載途中であり、結末が描かれることはありませんでした。完結編を劇場用新作アニメで制作する話もあったそうですが、残念ながら実現していません。この点が、本作の最も残念な部分となっています。おそらくは多くの子供たちがしばらくしてから原作の結末を知り、さまざまな感慨を抱いたのではないでしょうか。
筆者自身はアニメの終了後に姉から原作を借りて最終回を読んだとき、当時小学生の身ながら愕然としたことをよく覚えています。若松家のふたりが愛し合っていたことを知りながらも、自分の気持ちを止められなかった、選ばれなかった人たちが、幸せになったことを祈らずにはいられません。この結末をアニメで見てみたかった……。
(早川清一朗)