特撮から学ぶ「SDGs」!怪獣たちが教えてくれる環境問題 温暖化も公害も重大な人類の敵
1960年代から環境問題を取り上げてきたウルトラシリーズは、持続可能な暮らしを目指す「SDGs」の先駆けとも呼べる存在です。公害によって生まれた怪獣、原油を食べる怪獣…科学技術の発展で生まれた彼らの起源を探ります。
怪獣たちから学ぶ行動変革
最近、「サスティナブル」や「SDGs」という言葉が当たり前のように使われるようになりましたが、これは人類が地球で暮らしていくために必要な「持続可能な開発目標(Sustainable Development Goals:SDGs)」を指しており、2015年の国連サミットで採択されました。貧困、環境問題、感染症など様々な課題に直面する人類ですが、前述の「持続可能な暮らし」にいち早く警鐘を鳴らしていたのが、怪獣が登場する特撮作品です。
例えば、1954年公開の映画『ゴジラ』です。作中では水爆実験が原因となりゴジラが出現しますが、この設定は映画公開の同年、南太平洋のビキニ環礁で米国が行った水爆実験によりマグロ漁船・第五福竜丸など多数の漁船が被ばくした事件を基に着想したと言われています。ゴジラはいわば、「核兵器への脅威」を体現した存在として描かれているのです。そして、1971年に公開された『ゴジラ対ヘドラ』では、海のヘドロから生まれた公害怪獣・ヘドラが登場。高度経済成長期に大きな問題となった、「公害」をテーマにしています。
戦後の日本は高度経済成長に入り、工業化や土地の開発が急速に進みました。人々の暮らしが豊かになる一方で、大気汚染や水質汚濁、有毒な物質による病気の蔓延など公害が深刻化。そんな混沌とした時代に放送が始まったのが、ウルトラシリーズでした。『ウルトラQ』や『ウルトラマン』では、ただの勧善懲悪ではなく、環境問題をはじめとした社会風刺要素が取り入れられ、作品の魅力が増しています。
今からおよそ半世紀前には、すでに地球温暖化を予見したような怪獣も登場しています。1966年放送『ウルトラQ』の第14話に登場した怪獣ペギラは、原子力発電所の爆発した影響で南極の気温が上昇したことにより、北極に移動する途中で日本に現れたという設定でした。
人類の科学技術の進歩によって、多くの怪獣も生み出されています。『ウルトラマン』第3話のネロンガは、江戸時代から生息していた生物でしたが、発電所近くの井戸の中から電気を吸収し巨大化。著しく巨大化した体を維持するため、より多くの電気をもとめて地上に進出します。第13話に登場する油獣ペスターも石油を常食とする怪獣であり、各地でタンカーを襲った後、日本に上陸します。SDGsでは環境負荷が低いクリーンなエネルギーの開発が目標とされるなか、こうした怪獣たちは従来のエネルギーへの依存した結果、人類の敵になってしまったとも見えます。
また、現在も日々海洋のマイクロプラスチック問題がニュースとなるなか、1971年放送の『帰ってきたウルトラマン』では早くもプラスチック問題を扱った怪獣が登場しています。第22話に登場するプラスチック怪獣・ゴキネズラは、埋立地に住んでおりプラスチックを食料としていました。しかし、そこで発生した火災を消化したことで酸素が絶たれ、地上へと姿を現します。今ではヘドラと並び、環境破壊によって生まれた怪獣として有名です。
さらに地球の未来を予想した宇宙人も登場しています。『ウルトラQ』第19話に登場したケムール人は宇宙人という設定ながらも、実は飯島敏宏監督は「未来の地球人」をイメージしたものだと明かしています。ケムール人の不気味な見た目も大気汚染が深刻化した結果、あのような姿に変化したのだそう。『ウルトラマン』に登場したバルタン星人も、高度な科学力を持ちながら核実験によって母星を失い、地球に移住しようとしていました。
科学技術の進歩と故郷での永住問題というのは、まさに現代社会に通じるものもあるのではないでしょうか。このように、特撮は人類と環境の問題を投影しており、怪獣たちは人類に必要な行動を教えてくれています。今後は「SDGs」の観点で見ても、面白いかもしれません。
(椎名治仁)