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『ウルトラマンA』と『変身忍者 嵐』の視聴率争い 二者択一を迫られた子供たちの対応は?

当時の子供たちに「選択」を迫ったTV局の視聴率争い

「変身忍者 嵐 VOL.1」DVD(東映)
「変身忍者 嵐 VOL.1」DVD(東映)

 この火花散る特撮ヒーロー番組の視聴率争いは、当時の子供には悩ましい問題でした。しかし、当時のTVというのは人気番組に同じようなジャンルの番組をぶつけることは日常茶飯事だったのです。

 筆者はとにかく『帰ってきたウルトラマン』が大好きな子供だったので、その流れで『A』を観ていました。『嵐』は雑誌の特集やマンガで楽しむ程度。当時はTV作品のマンガ化というものが少なくなかったので、見られないTVは本で妥協するというのが、当時の子供の定番でした。

 一方、製作側はこの視聴率争いを制するため、当初とは異なった方向転換、「テコ入れ」を行います。

『A』では、前述した男女の合体変身、宿敵ヤプールの存在といった本作独特の要素を2クールほどでやめました。代わりに「ウルトラ6番目の弟」として地球人の少年・梅津ダンを登場させます。しかし、このキャラも作品終盤で姿を見せなくなりました。一説によると次回作『ウルトラマンタロウ』で、ウルトラ6兄弟を扱うときに都合が悪くなるからと言われています。

『嵐』ではもっと大胆に行われていました。2クールに入ってから潜水艦や気球、ロボットといった時代考証を考えないものを投入したほか、敵として西洋妖怪を登場させます。これに合わせて主人公の双子の兄である「月ノ輪」というセカンドヒーローも投入しました。

 さらに3クール最後には、この月ノ輪と嵐が合体して「新生嵐」となり、西洋妖怪を陰から操っていた「大魔王サタン」との戦いという展開を迎えます。この他にも原色で派手だった衣装も地味な忍び装束になり、レギュラー陣も入れ替えるなど、細かい点を含めると、かなりのテコ入れがされました。

 こういったテコ入れが、実際にどれほど効果があったのでしょうか?

 実はこのテコ入れで、筆者は『A』から『嵐』に乗り換えています。

 それは当時のこと、筆者は『A』に対して不満に思っていました。それはウルトラ兄弟の扱いです。『A』でのウルトラ兄弟は第5話のゾフィー以外にほとんど活躍がなく、全員そろうと全滅……というイメージがあったからです。当時はまだゲストヒーローの扱いに慣れていなかったからでしょう。

 そんな時、『嵐』を見ていた友達から、「『嵐』に死神博士が出てきた」という話を聞きます。前述の大魔王サタン役を演じているのが、死神博士だった天本英世さんでした。しかも、その後に地獄大使役の潮健児さんも登場します。

 そういったことから当時の筆者は『A』から『嵐』に乗り換え、その後は最終回まで視聴しました。こういったように子供というのは移り気なものですから、自分の興味のある方へ簡単に舵を切ります。実は『嵐』の強化案に、江戸時代にタイムスリップした仮面ライダーと嵐が共演するというアイディアもありました。結局、実現しませんでしたが、もしも共演していれば、当時の人気からして『嵐』の人気はグッと上がっていたかもしれません。

 最終的に、この両者の視聴率争いは『A』に軍配が上がりました。そして、次回作である『タロウ』にバトンタッチします。しかし、TBSとテレ朝が子供視聴者を獲得する戦いはここからが始まりでした。以降もお互いに番組を入れ替えてし烈な視聴率争いを続けるからです。

 ともに創映社(現在のサンライズ)制作、キャラデザインが安彦良和さんの作品である『わんぱく大昔クムクム』対『勇者ライディーン』。東映製作の『宇宙鉄人キョーダイン』対、東映動画制作の『キャンディ キャンディ』といった、仁義なき戦いが繰り広げられていきました。

 そうした争いは最終的には『ドラえもん』というお化け番組の登場で幕を閉じますが、それまでの間、多くの子供たちは何度も選択を迫られる時間帯だったのです。

(加々美利治)

【画像】斬新なデザインでも争った?「ウルトラマンA」と「変身忍者 嵐」(5枚)

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