『ストII』世代が体験した、驚きのアーケード事情 対戦は横並び、穴場はボーリング場…
対戦格闘ブームの火付け役となった『ストリートファイターII』。ジャンルの先駆者だったため、当時のゲームセンターにおけるプレイ環境は、今現在と比べると大きく異なる点も多々ありました。その衝撃的な対戦事情とは……?
今では考えられない、『ストII』黎明期のアーケードゲーム事情

世界規模の大会が開かれ、数多くの人気シリーズが今も支持されている対戦格闘ゲーム。一大ブームを巻き起こし、このジャンルの知名度を一気に引き上げた立役者といえば、1991年に登場したアーケードゲーム『ストリートファイターII』(以下、ストII)に他なりません。
格闘家同士が己の技を駆使して戦い、勝利を目指す。その構図はゲームのなかだけでなく、プレイヤー同士の関係にも当てはまり、対戦プレイという遊びが一気に加速。友達同士で遊ぶこともありましたが、名も知らぬプレイヤー同士の対戦も頻繁に行われ、目の前にいる「誰か」に勝つ感覚は新鮮で刺激的な体験でした。
こうして対戦格闘ゲームは黄金期を迎え、一時期の熱が収まった後も人気ジャンルのひとつとして定着し、今現在に至ります。
『ストII』登場から数えると30年を超える歩みを刻んでおり、そのあり方は時代と共に変化し続けました。今では盛んなオンライン対戦がないなど、当時の環境とはまるで違う点も少なくありません。
そこで今回は、『ストII』現役世代が直接体験した、現代とは異なるアーケードゲームの対戦事情をお届けします。
●黎明期の『ストII』対戦は一触即発だった!?
現在の対戦格闘は、向かい合う2台の筐体を使った対面方式がほとんど。配置にもよりますが、対戦相手の顔を見る機会もないまま勝敗がつくことも珍しくありません。しかし、こうした対戦環境が整ったのは後の話です。
『ストII』が出始めた頃は、1台の筐体を共有する対戦スタイルが主流で、誰かがプレイしている脇に座ると、それが対戦の合図に。1台の筐体にふたりが向き合うため、物理的な距離はかなり短め。かろうじて触れあわない程度の、パーソナルスペースに入りまくりな距離感です。
これが友達同士ならいざ知らず、見知らぬ他人の乱入も多々。本来の意味とは異なりますが、一触するか否かの距離に誰かが来ると、対戦が即発する──勝敗とは別種の緊張感も伴う、独特な対戦環境でした。