【漫画】娘との真剣勝負に負けたのに母「うれしかった」 同じ経験を持つ読者も多数
水谷アスさんが、娘のハナさんとのエピソードを描いたマンガ『真剣勝負に負けた事が嬉しかった時の話』をTwitterで公開しています。マンガ投稿サイト「コミチ」の公募で大賞も受賞した作品で、注目されています。
自作の小説をもとにしながら公募に向けてマンガ化された作品

水谷アスさん(@mizutanias)の娘のハナさんは「負ける」ことが大嫌い。そのため、母親である彼女は、ゲームでは弱い相手を演じてわざと娘に負けていました。やがてハナさんが成長したことから、水谷アスさんは「そろそろ手加減せずに勝負をしよう」と決心。本気を出してトランプで対戦してみると……?
このエピソードを描いたエッセイマンガ『真剣勝負に負けた事が嬉しかった時の話』がTwitterで公開されています。読者からは「泣けてきた」「ウチの子もそうだったなぁ」といった感想をはじめ、さまざまな視点からのコメントが寄せられました。作品には、1万件を超える「いいね」が集まっています。
作者の水谷アスさんに、お話を聞きました。
ーー今回の作品は、どのような経緯で描かれましたか?
2022年3月まで受講していたコルクラボマンガ専科の講義のなかで、山田ズーニー先生の講義「表現実習」で「負け」をテーマにした小説を書きました。その後、マンガ投稿サイト「コミチ」で開催されていた公募とその小説の話がちょうど合うと感じたので、マンガにして出そうと思ったのがきっかけです。
ーー「コミチ」で実施された「#わたしのスカッとした話」がお題の公募では、見事に大賞に選ばれました。おめでとうございます。受賞の感想をお聞かせ下さい。
ありがとうございます。最初に「#わたしのスカッとした話」というテーマを見た時は、勧善懲悪のようなお話がいいんだろうなぁと思ってネタ出しをしていました。でも、勧善懲悪のお話は誰かを悪者として描くので、スカッとするけどどこかモヤモヤもするなと……。なので、悪者が出てこない「スカッと」を目指しました。
その結果、「本当にこれはスカッとする話なのか?」という作品になってしまったのですが、大賞をいただけたので、うれしさ半分驚き半分のような気持ちです。
ーーマンガの元になった小説を執筆した際には、いくつか「負け」のエピソードの候補があったようですが、最終的にこの体験を作品にしたのはなぜでしょう?
講義で自分のなかに出てきた「負け」のエピソードは3つあったのですが、これ以外の「負け」は本当につらかった「負け」でした。つらかった気持ちの言語化も大切ですが、最後に受講生どうしで小説を朗読することにもなっていたので「読む自分の心が穏やかでいられる」ことを考えてこのエピソードを選びました。

ーー小説をマンガにする際に、特に工夫した点や、何か難しかったことなどはありましたか?
文字だけでは伝わらないその場の空気感を伝えられたらいいなと思い、絵はできるだけ柔らかいタッチにしました。
小説は場面をすべて文字で説明できる楽な部分もあるので、それをどうマンガにしていくかというのは難しかったです。小説では「親は子に負けることがうれしい」とはっきり書いたのですが、マンガのほうでは対話と表情だけでそれが伝わることを意識しました。
多くの人に共感いただけたということは「伝わったのかな……」とホッとしています。
ーー今回の作品に対する読者からの反応で、特に印象に残った声があれば教えて下さい。
印象に残ったという点では「わざと負けてあげることは本人にとって教育上良くないのでは?」という意見でした。これはネガティブな意見ととらえたということではなくて、もちろんそれも一理あるよねという意味です。私もこれでいいのかなと悩んだ部分だったので。
個人的に育児には「こうすることが正しい」というものはなく、子どもによって正解が違うと思っています。マンガは日常のほんの一部を切り取ったものなので、見えない日々の背景も考えながら読んでいただけたらうれしいです。
ーー定期的に更新されている『自閉日記』をはじめ、水谷アスさんはTwitterで精力的にマンガを公開なさっています。創作するうえでの原動力となっているものはありますか?
自分は会話で相手に気持ちを伝えることがとても苦手です。文章は好きですが、文で伝えようとすると長くなり相手にプレッシャーを与えてしまう。その点マンガは「自分の伝えたいこと」を、相手に伝えやすい手段だなと感じています。
なので「伝わった」ことが分かるような感想をいただけるとすごくうれしいし、それが創作の原動力になっています。応援していただける方に感謝です!
●水谷アスさん 前回のインタビュー
(マグミクス編集部)