マグミクス | manga * anime * game

マンガからの改変が絶妙な実写映画4選 ビジュアル、バトル表現、脚本に光る工夫

マンガと実写映画には、二次元と三次元というギャップがあります。そのギャップを上手く埋められるか埋められないかは作品次第。今回はマンガ原作実写映画で、改変が上手くいった傑作、良作を紹介します。

マンガから映画にするには工夫が必要

実写、アニメともに評判の高い『ピンポン』ポスタービジュアル (C) 2002「ピンポン」製作委員会
実写、アニメともに評判の高い『ピンポン』ポスタービジュアル (C) 2002「ピンポン」製作委員会

 22年4月19日に『ゴールデンカムイ』の実写映画の製作が発表され、ファンを中心にいろいろと話題を呼んでいます。マンガを映画にする際には、上映時間の都合などもあり、どうしても原作との違いが生じてしまうもの。今回は、マンガとはまた「別物」になっていることを前提として、それでも原作を映画にする際の「改変」が上手くいっている実写映画を振り返ります。

●『ピンポン』の「キャラビジュアル改変」

 松本大洋先生の代表作『ピンポン』は、松本先生の平面的でデフォルメされた絵柄とマジックリアリズム的な表現が特徴で、湯浅政明監督のアニメ版はそのデフォルメされた表現に対し、アニメならではのデフォルメされた表現で迎え撃っていました。

 逆に、それ以前に作られた2002年の実写版『ピンポン』は、あくまでも生身の俳優が演じることを念頭に置き、原型を残しつつギリギリ現実にいそうなレベルにまで、キャラクターのビジュアルを改変しています。ペコのおかっぱ頭や海王学園が全員スキンヘッドなど原作に寄せるのは極めて特徴的な部分に留め、他のキャラクターについては髪型すら無理に再現しようとしていません。脚本の宮藤官九郎さんは舞台畑の出身で、今流行りの「2.5次元舞台」のようなテイストになっていました。

 内容は概ね原作に忠実ですが、カットされたエピソードもいくつかあります。原作で非常に印象的だった今後の方針をかけてスマイルと小泉先生が試合をする場面はカットされた大きな部分のひとつですが、カットによって流れが損なわれている印象あまりなく、そもそも原作が全55話しかないので、114分にまとめられた上映時間でも物足りなさは感じませんでした。

 映像的に出色なのが試合の場面で、生身の肉体の動作など、実写でしか得られない躍動感を感じることができます(ピンポン球の動きは多分ほとんどCGですが)。試合の場面については、アニメと違った魅力が感じられると思います。

●『アイアムアヒーロー』のゾンビアクション映画としての改変

 花沢健吾先生による、異色のゾンビマンガの実写映画『アイアムアヒーロー』。同作の特徴はゾンビが突如増殖する伝統的なゾンビパニックものであるにもかかわらず、主人公の内面描写が非常に多く、内省的な要素を兼ね備えていることです。主人公の年齢も30代半ばと高めに設定されており、少年誌にはない良い意味で青年誌的な青年マンガでした。

原作では単行本1巻がほとんど丸々主人公の日常描写でしたが、映画では登場人物のバックグラウンド描写を大胆に刈り取り、サバイバルサスペンスとしてコンパクトにまとめています。原作とは別物ですが、これはこれで効果的な改変だと思います。それでいて、日常からゾンビパニックへ変貌する原作の雰囲気はしっかりと残っているのも見事です。

 映画で描かれているのは原作では半分弱程度の部分までで、ショッピングモールから脱出するところがクライマックスになっています。ここで原作にも登場する「陸上ZQN」をゾンビ映画では珍しいラスボス的な位置づけに昇格させ、視覚的にも盛り上がる展開にしているのも見事です。

【画像】ほかにも紹介したい、改変が上手い実写映画!(10枚)

画像ギャラリー

1 2