マンガからの改変が絶妙な実写映画4選 ビジュアル、バトル表現、脚本に光る工夫
映画としての完成度のためにはストーリーは削るべき?

●『るろうに剣心』シリーズのビジュアルとバトル描写の工夫
和月伸宏先生の人気マンガ『るろうに剣心 -明治剣客浪漫譚-』の実写映画は大ヒットし、「最終章」まで5作品が作られました。
『BLEACH』(ルキアは違いましたが)にしても『鋼の錬金術師』にしても『ニセコイ』にしてもそうですが、マンガを実写化した映画に、「原作のビジュアルに無理に寄せすぎ」という印象を受けることが多くあります。「お金のかかったコスプレPV」として割り切って見るなら楽しめるかも知れませんが、「映画」として考えるとあまりにも実在感がなすぎて違和感につながるのかも知れません。
一方の実写版『るろうに剣心』は、キャラのビジュアルは原型を留めつつも、ある程度実写の「時代劇」としてリアルな範囲に調整されています。
衣装のデザインもおおむね原作に忠実ですが、汚れや着古した加工をしっかりと施し、実在感があります。剣心の十字傷にも生傷感があり、実写としてギリギリの実在感を感じるレベルまでビジュアルを落とし込んでいました。また、刃と峰が逆になった「逆刃刀」は相手の動きを止める鈍器のように扱われており、ヒーローがコスチュームを着て戦うマーベル映画のような、ちょうどいい具合のリアリティの武器になっています。「時代劇」の範疇に収めるため、戦闘の時に技の名前を叫ばないようにしているのも良い改変だと思います(オリジナルアニメの『るろうに剣心 -明治剣客浪漫譚- 星霜編』でも、技の名前を叫ばない演出が採用されていました)。
上映時間内にまとめるために、原作を忠実に再現し過ぎなかったのも、一部に議論はありましたが、映画作品としては「妥当な判断」と言えるでしょう。
●『バクマン。』原作からのキャラの整理とマンガ愛あふれる終わらせ方
漫画家を主人公にした『バクマン。』の実写映画は、登場人物を中心に大きく話を「整理」しています。原作の『バクマン。』は全176話の長編ですが、映画は120分。1本の映画にまとめるために、ヒロイン・小豆以外の名前のある女性キャラは全員カットし、編集部のキャラクターはふたりの人物に役割を統合しています。
多くのキャラクターを削除したことで群像劇的な要素と恋愛要素は希薄になりましたが、主人公ふたりにフォーカスしたドラマとして、スッキリとテンポよくまとまっています。176話もあるマンガを120分に収めるのですから、取捨選択はどうしても必要になります。物語構成は原作とは「別物」になってしまいますが、効果的な処理の仕方でしょう。
原作では大量の文字情報で処理されていたマンガ制作の過程が、映画らしくモンタージュで処理されているほか、プロジェクションマッピングを使った映画ならではの演出もあったのもポイントが高いです。高校卒業後も続く原作とは違い、「俺たちの戦いはこれからだ」的なエンディングにしたのも、いかにも少年マンガ的でジャンプ作品への愛も感じます。また、「マンガ愛」あふれるエンドロールも、好評を得ました。
マンガでも「お仕事もの」はもともとフィクション度が低い(現実との地続き感が強い)からか、実写との相性が良いです。学園ドラマでもありますが、酪農を扱ったある種の「お仕事もの」である『銀の匙 Silver Spoon』も、実写版ならではの魅力が感じられる作品でした。
(ニコ・トスカーニ)