読み切りから生まれたジャンプ人気マンガ4選 連載版にはない驚きの設定も振り返る
読み切り版の設定やキャラクター造形が、本編にも引き継がれていることも
●読み切り版の主人公は虚弱体質の会社員!『僕のヒーローアカデミア』
ジャンプの看板作品のひとつ『僕のヒーローアカデミア』にも、プロトタイプとなる読み切り版『僕のヒーロー』(「赤マルジャンプ2008 WINTER」に掲載)がありました。『僕のヒーロー』はヒーローが日常に存在し、それぞれのヒーローが事務所に所属しているという設定の物語ですが、これはそのまま「ヒロアカ」にも引き継がれています。『僕のヒーロー』の主人公は、虚弱体質のサラリーマン・緑谷弱(みどりや・ジャック)。本編の主人公、「デク」と苗字と髪型だけでなく、「体質が原因でヒーロー免許を取得できなかった」という点が共通しています。
作者の堀越先生は、過去の連載作品が短期間で終了したことから創作意欲が落ちていたものの、描きやすかった『僕のヒーロー』をもとに『ヒロアカ』の構想を作成。自身の好きなヒーローものを描くという原点に回帰した結果、大ヒット作が生まれたという背景があります。『僕のヒーロー』がなければ、『ヒロアカ』も生まれなかったと考えると、非常に重要な作品といえるでしょう。
●2度の読み切りが本編連載につながった!『るろうに剣心-明治剣客浪漫譚-』
実写版も大ヒットしたマンガ『るろうに剣心-明治剣客浪漫譚-』にも、プロトタイプとなる読み切り作品『るろうに -明治剣客浪漫譚-』が本編連載前に掲載されていました。
『るろうに -明治剣客浪漫譚-』では恵と薫と弥彦が姉弟であるほか、薫の父が維新志士で「抜刀斎」と顔見知りであるなど、本編と大きく設定が異なります。92年に掲載された読み切り版は好評となり、翌93年にも同名のタイトルで掲載されることとなりました。
2作目となる読み切り版は不平士族「回天党」に攫われた令嬢・来迎寺千鶴(らいこうじ・ちづる)を剣心が救い出すというストーリーであり、設定は本編の1年前の出来事です。そして、『るろうに剣心-明治剣客浪漫譚-』へと改題され、連載開始となりました。
本編と設定が異なる連載前の読み切り作品は、誰もが知る人気作となった今読み比べてみると新たな発見があるかもしれません。
(田中泉)