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『ガンダム』ダイクンの死因は暗殺? 病死? もし生きてたら? 史実・資料から検証

もしダイクンが長生きしていたら…

時代に翻弄されたジオン・ズム・ダイクンの子供たち、のちのシャア・アズナブルとセイラ・マスが描かれる『機動戦士ガンダム THE ORIJIN』第9巻(KADOKAWA)
時代に翻弄されたジオン・ズム・ダイクンの子供たち、のちのシャア・アズナブルとセイラ・マスが描かれる『機動戦士ガンダム THE ORIJIN』第9巻(KADOKAWA)

 もし、ダイクンが長生きしたら、どうなったでしょうか。

 ダイクンは演説準備のなかで、アストライアに「この演説は自治権拡大ではなく、地球圏に住む者たちへの宣戦布告」「私は明日、ゴルゴダの刑場へ曳かれるんだ。そして十字架の上から、世界に告げるんだ。ガイアの怒りに触れた罪深い者たちはまもなく業火に焼かれ死滅する」と発言しています。

 安彦総監督が言及されている通り、『ORIGIN』でダイクンの解釈が変更されていますが、それまでは「ダイクンは平和主義者で、権力を奪ったザビ家が軍事独裁国家にした」という解釈が主流でした。『ORIGIN』ではダイクンは「宣戦布告」と感じています。映像作品が公式と解釈すべきでしょうから、ダイクンは平和主義者ではないのでしょう。

「宇宙世紀0058年にダイクンがサイド3を独立させた。0062年に国防隊が国軍に格上げされた」という設定もあります。一方『逆襲のシャア』でキャスバル(シャア)は「スペースノイドの自治権を地球に要求したときに、父ジオンはザビ家に暗殺された」との発言がありますが、ダイクンの死は0068年です。つまり0058年に独立宣言をしたものの、連邦に承認されず、より強いメッセージを0068年に発しようとしたのでしょう

 なおダイクン死去の直後に、タチがランバを「大尉」と呼んでおり「0062年に国防隊を国軍に昇格させた」ことは間違いないでしょう。つまり、ダイクンの「独立運動」も、平和主義ではなく、軍事的な裏付けを得たものです。キャスバルは『逆襲のシャア』で「父・ジオンの元に召されるであろう」と演説を終えていますが、その後の行動は小惑星アクシズを地球に落とす作戦です。ダイクンが平和主義者なら、父に反する作戦と止めたでしょう。

 一方、デギンは軍事力に抑制的で、反連邦の騒乱を煽る息子のギレンに「騒乱を沈めろ。コロニー国家が連邦に勝てるわけがない」と命じたほどです。デギンは国名を「ジオン」に改める人ですから、ダイクンに一定の敬意を持っていたとも考えられます。

 上記から考えると「先鋭的改革思想を打ち出そうとするダイクンを、現実主義で腹芸ができるデギンが抑え、それを政敵のジンバが『ダイクンの思想を妨げようとしている。デギンはダイクンの権力を狙っているのだ』と対立する」となりそうです。

 ただし、ザビ家は軍事力とメディアを握っており、ジンバが主導権を握るのは難しいでしょう。ダイクンに近づくのは、急進的改革思想が同じギレンだと思います。

 一方、ダイクンの息子であるキャスバルは、通っていた学校の校長に「明晰な頭脳、鋭い感性、類いまれな素質を持った人物」と評され、実際、シャア・アズナブルと呼ばれた後の時代ではパイロットとしても、指揮官としても、政治家としても成果を上げた優秀な人物ですし、『ORIGIN』のなかで、ガルマ・ザビに「自分の手で歴史の歯車を回してみたくないのか」と反乱を焚きつける性格です。ギレンがダイクンへの影響を強めるなら、成長したキャスバルは対抗上、デギン、ドズル、ガルマを影響下に置こうとするでしょう。

 ドズルとガルマは優秀な人物を素直に認める性格をしていますから、優秀なキャスバルが主君なら心酔したと考えられます。謀略好きなキャスバルですから、妹のアルテイシアを同世代のガルマと婚約させ、取り込むでしょう。美しい妹とその婚約者はプロパガンダで活躍したはずです。

 ただ、誰が指導者でも、30倍の国力を持つ連邦はジオンの独立を認める必要はなく、対立路線を進めば軍事衝突は避けられなかったでしょう。その戦争で、他のサイドへの攻撃や、コロニー落としが行われたかはわかりませんが、後々でアクシズを地球に落とそうとしたシャアの行動を見れば「ほぼ同じ」かもしれません。

(安藤昌季)

【画像】連邦軍が悲鳴! 1年戦争初期に猛威を振るったジオンのMS (5枚)

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