少女マンガの神様・萩尾望都の伝説3つ 痴漢を撃退した武勇伝も!
『ポーの一族』や『トーマの心臓』などの作品で美しい世界観をつむぎ出し、「少女マンガの神様」とまで称される萩尾望都先生。現在も精力的に描き続ける漫画家人生は、ひたすらマンガひと筋で、だからこそ驚嘆の伝説も生み出していました。
マンガの神様に導かれたマンガ道
「少女マンガ」の神様と呼ばれる萩尾望都先生は、70年代から今にいたるまで、マンガを愛する少女たちの憧れの的です。その作風は驚くほど広く、『ポーの一族』や『トーマの心臓』で文学的な美しい世界観を構築し、『11人いる!』や『スター・レッド』などの作品群で少女たちにSFの世界の扉を開き、さらに『イグアナの娘』では等身大の少女の心の悩みまで探ってくれました。
さまざまなマンガファンの琴線に触れるという、まさに神様のような存在なのです。今回はそんな萩尾望都先生の、「マンガひと筋伝説」をご紹介します。
●マンガの神様・手塚治虫先生に導かれる
今では「少女マンガの神様」と呼ばれる存在の萩尾先生ですが、先生自身もかつては漫画家に憧れる少女でした。中学の頃は『鉄腕アトム』や『サイボーグ009』など大好きなマンガをマネして、ひたすらノートに描いていたそうです。ただし、どうすれば漫画家になれるかも分からず叶わぬ夢と思っていたのだとか。
そんな萩尾先生に「絶対に漫画家になろう」と決意させたのは、「マンガの神様」と称される手塚治虫先生の『新選組』でした。敵方のスパイだった親友を斬りに行く男の心情を、わずかなコマとセリフで表したこの作品に引き込まれ、「ちゃんとプロになってこの『新選組』で受けた衝撃を誰かに返したい」と思ったのだそうです。
強い思いで1969年に『ルルとミミ』でデビューした萩尾先生は、翌年、手塚先生からさらなるアシストを受けることになります。
出版社に原作付きの原稿(『ケーキケーキケーキ』)を依頼されたのですが、それは主人公がパリのお菓子屋さんで修行する話。今と違って簡単にネットで調べることもできない時代です。パリのお菓子屋さんなど見たこともなく、萩尾先生は描写に困り果てたそうですが、そこに燦然(さんぜん)と降臨したのが「マンガの神様」でした。
手塚先生のアシスタントをしていた方の計らいで、ちょうどパリから帰ってきたばかりの手塚先生に話を聞くことができたのです。自分をマンガ界に導いてくれた手塚先生から、パリのお菓子屋さんの様子を直接教えてもらえた喜びは、いかばかりだったでしょう。八百万の神のなかの「マンガの神様」が、ステキな采配をふるってくれたとしか思えません。
ケーキが今よりずっと贅沢品で憧れの食べ物だった時代。本場、パリのお菓子屋さんを舞台にした『ケーキケーキケーキ』は、作品中のおいしそうなケーキのビジュアルとともに70年代少女の心をがっちりとつかみました。いまだにどんな高級なケーキを食べても、当時憧れたケーキとは出会えていない、と感じる70年代少女もいるのではないでしょうか?