半世紀におよぶ名前問題 『帰ってきたウルトラマン』を何と呼ぶ?ジャック?新マン?
半世紀前に誕生した際に、正式名称が与えられなかった『帰ってきたウルトラマン』。後に「ウルトラマンジャック」という名前を授けられましたが、そこからファンの間の名前論争は激しさを増しました。
正式名称のなかったウルトラマン

早くも話題沸騰、大ヒット中の空想特撮映画『シン・ウルトラマン』。ファンのなかには今回のウルトラマンを「シン・マン」と略す人も多いのですが、書き方は違うものの同じ音で「新マン」と呼ばれていたウルトラ戦士がいることをご存じでしょうか?
それは第二期ウルトラシリーズ第一作目『帰ってきたウルトラマン』(1971年)に登場する「ウルトラマンジャック」です。このウルトラマンの名前には、複雑な事情がありました。それは長い間、現在でもファンの間で論争になる「ウルトラトラブル」のひとつと言えるかもしれません。
この『帰ってきたウルトラマン』というタイトルは、現在のウルトラシリーズに多く見られる『ウルトラマン○○』といったパターンと比べると、異質だと感じる人もいるかと思います。実はこのタイトルは、第一期ウルトラシリーズ第二作目『ウルトラマン』のウルトラマン本人が、タイトル通り「帰ってきた」からつけられたものでした。つまり2つの作品のウルトラマンは、同一人物だったというわけです。
しかし、このアイディアは商品上の都合で廃案、登場するのはまったく別のウルトラマンということになり、デザインも変わることになりました。この時、タイトルを変えてウルトラマンに個別の名前をつけなかったことが、後々のファン論争のきっかけとなります。
TV作品本編ではウルトラマンはひとりしか出てこないので区別する必要はありませんが、雑誌で紹介する場合はそうはいきません。当時の雑誌を見てみると、「前のウルトラマン」、「古いウルトラマン」という呼び方に対して、「新しいウルトラマン」という区別がされていました。
これが徐々に「初代ウルトラマン」と「新ウルトラマン」という呼び名で区別されるようになります。個人的には、この「新ウルトラマン」を略して「新マン」という呼び名が一番しっくりしました。
ところが、正式に決まっていないことから呼び名は人それぞれ。子供たちのなかには帰マン(きマン)、帰りマン(かえりマン)と呼ぶ人もいました。当時は今でいう公式の見解はなく、「帰ってきたウルトラマン」を何と呼ぶかで、争う子供も少なくなかったと思います。
ちなみに筆者の子供時代の周囲は、「新マン」呼びがほとんどだったので特に問題はなかったのですが、高校時代になって別な地区の人と同級生になった際、別の呼び方が主流だった人といざこざになったことがありました。
TVの方でも統一見解のようなものは発信されず、続編『ウルトラマンA』(1972年)では初代ウルトラマンとの区別でいきなり「ウルトラマンII世」という名前で呼ばれたり、以降の『ウルトラマンタロウ』(1973年)や『ウルトラマンレオ』(1974年)では新マンと呼ばれたりしています。