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みんな虜!『ゴールデンカムイ』鶴見中尉のカリスマ人身掌握術 読者もいつしか手中に?

『ゴールデンカムイ』の敵ポジションながら、圧倒的なカリスマ性で部下からも読者からも熱愛される鶴見中尉。不気味でクレイジーでカッコいいという把握しにくい魅力と、恐るべき人心掌握術をご紹介します。

素顔が見えない鶴見中尉……あなたは何者?

鶴見中尉が表紙の『ゴールデンカムイ』DVD2巻(NBCユニバーサル・エンターテイメントジャパン)
鶴見中尉が表紙の『ゴールデンカムイ』DVD2巻(NBCユニバーサル・エンターテイメントジャパン)

 完結を迎えた人気マンガ『ゴールデンカムイ』にはキャラの濃い登場人物が目白押しで、読者の「推し」も分かれるところですが、敵ポジジョンながら主役に負けないほどの人気を誇るのが、鶴見中尉こと鶴見篤志郎です。作品の世界観を体感できる「ゴールデンカムイ展」でも、火曜日に特別な「鶴見中尉ナイト」なるイベント(鶴見中尉or鯉登少尉のお面がもらえて、かぶって鑑賞できる)が設けられ、行列ができる大盛況ぶり。部下たちばかりか、読者をも熱狂させる鶴見中尉の「人たらし」っぷりを振り返ります。

 鶴見中尉は、陸軍最強と謳われた北海道の第七師団に属し、本作の主人公である杉元佐一とアシリパ(リは小文字)とは、刺青人皮をめぐって敵対する人物です。

 初めての顔見せは単行本第1巻のラストページで、ドアップで登場したとたん「以下、次巻」となり大物感満載でした。ビジュアルも印象的で、額から目の真上までを琺瑯(ほうろう)製の額当てで覆っているという、謎っぷり。その後額当ては、かつて日露戦争で砲弾の破片に前頭部の頭蓋骨を吹き飛ばされたため(その際、脳みそも少し飛ばされたんだとか)のケアだとわかるのですが、時折その下から「変な汁」も漏れ出すという不気味さです。

 上官である和田大尉に指を突きつけられれば噛みちぎる、杉元の頬を団子の串で突き刺して歯を鳴らす、さらに刺青人皮をシャツのように着こんでいるなど、序盤からクレイジーさが爆発で、敵対する悪としてはとてもわかりやすい存在でした。けれども……物語が進み、細かいエピソードや過去の姿などが描かれ始めると、その印象は少しずつ変化していきます。

 たとえば、ボニー&クライドのような夫婦強盗の「稲妻強盗と蝮のお銀」が亡くなった後、赤ん坊が残されたと知ると、鶴見中尉は「あの夫婦は凶悪だったが…愛があった」とつぶやきます。そしてその子を抱きながら、「どこか信頼のできる人間に託さないと」と言うのです。赤ん坊は行李に入れられ、お金を添えてアシリパのフチ(おばあさん)の家の前に置かれました。異常な行動をして当たり前と思っていた人物の心ある行いに触れると、「真実とはいったい何だろう」と、世界が反転したような気さえしてきます。

 また、回想で出てくる頭部を吹き飛ばされる以前の姿は、「これがあの鶴見中尉?」と目を疑うような、ダンディでイケメンなジェントルマン。奇抜で残忍な行いをする人と同一人物とは、とても思えません。さらに若い頃はロシアのウラジオストクで市井に溶け込み、長谷川幸一として写真館を経営しながら日本のスパイとして活動していた過去も明かされます。その地で妻子を失うという悲しい出来事も描かれ、アシリパの父・ウイルクやキロランケたちとの因縁もわかり、衝撃の展開となりました。

※ここから先は『ゴールデンカムイ』のまだアニメ化されていない範囲のストーリーに触れていないので、原作未読の方はご了承の上お読みください。

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