怒りはパワー?ウルトラシリーズの怨念怪獣たち 望郷、悲恋…恨みの理由も多様
怪獣が街を破壊する理由のひとつに、単純明快な「復讐」があります。しかし、復讐の対象はさまざま。自らを墓場送りにしたウルトラ一族だったり、自由恋愛を認めない時代そのものだったり…。怒りをパワーにする怪獣たちを紹介します。
ウルトラマン・人間・時代…恨みの対象はさまざま
ウルトラシリーズの怪獣たちは「ただの自然現象」ではなく、出現する背景にさまざまなバックボーンを持っているのが魅力のひとつです。なかでも多いのが「恨みつらみ」により、怪獣化……というパターンです。ウルトラ一族への復讐を使命とする怪獣もいれば、恨みの対象が「人類」の場合も。一口に恨みと言っても、その理由も多種多様です。この記事では、代表的な怨念怪獣をご紹介します。
●暴君怪獣タイラント
「怨念」と聞いて、真っ先に思い浮かぶのが『ウルトラマンタロウ』第40話に登場したこの怪獣ではないでしょうか。頭はシーゴラス、耳はイカルス星人、両手はバラバ、胴体はべムスター、足はレッドキング、背中はハンザギラン、尻尾がキングクラブ……という、歴代ウルトラマンたちに倒された総勢7体もの怪獣が合体した強敵です。
正確には全て倒された怪獣ではなく、ハンザギランは洞窟内に封印され、シーゴラスは逃亡という結末でしたが、死んでいなくとも怨念さえあれば十分とする説もあります。劇中では海王星に出現してゾフィーを圧倒したのち、天王星でウルトラマン、土星でセブン……と順調に復讐を果たし、地球でタロウと激突しました。
●棲星怪獣ジャミラ
復讐という点では、シリーズ屈指の名怪獣とされるのが『ウルトラマン』第23話に登場するジャミラです。第23話「故郷は地球」はファンのなかでも特別人気が高いエピソードであり、ウルトラシリーズの特徴である「勧善懲悪には収まらない物語」が展開されます。
ジャミラは怪獣ですが、元は人間の宇宙飛行士であり水のない過酷な惑星に遭難してしまったのです。しかし彼の祖国は救助には動かず、宇宙開発の失敗を隠すために見捨ててしまいました。過酷な環境に置き去りにされ、怪獣となってしまったジャミラ。彼は自分を見捨てた人間への晴らすために、自力で地球へと帰還し国際平和会議の会場を狙います。
●異次元人ヤプール
ウルトラシリーズ初の「作品全体を通しての悪役」として登場したヤプールは、検索候補に「ヤプール しつこい」が定着しているほど、執念に取り憑かれたような敵でした。初登場は1972年放送『ウルトラマンA』であり、心理操作や子供たちを利用するなど直接対決ではない陰湿な方法で地球侵略を狙います。
その後も『ウルトラマンタロウ』などにも登場し、2006年放送『ウルトラマンメビウス』にもエース以来34年の時を超えてウルトラ一族への復讐のために復活を遂げています。
●再生怪獣ギエロン星獣
『ウルトラセブン』第26話「超兵器R1号」に登場するギエロン星獣も、ジャミラと同じく科学技術の進歩と人間のエゴの結果、生まれてしまった怪獣でした。
侵略者に対する抑止力として惑星破壊兵器R1号を開発するための実験場として選ばれたのは、灼熱の星であるギエロン星。生命体が適応できない環境とされていましたが、実際には生物が生息しており、R1号の実験による放射能で怪獣化。地球へ飛来すると、放射能による攻撃で暴れ回りました。「助けて」という悲鳴にも聞こえる鳴き声をあげながら、母星を攻撃されたことへの復讐で地球にやってきたと考えられています。
●怨霊鬼 戀鬼(れんき)
愛情に関する鬼も登場しています。『ウルトラマンコスモス』第18話「二人山伝説」に登場する戀鬼(れんき)は、戦国時代に結ばれなかった男女の魂が怪物となり、蘇った伝説の怨霊。ふたりは敵国の姫と恋に落ちた若殿でしたが、自由恋愛できない戦国時代ゆえに引き裂かれます。魂は成仏できずに二人山(にびとやま)に封印されていましたが、ダム建設の影響により復活を遂げました。
それぞれの怪獣と対峙するウルトラマンの姿にも、視聴者は釘付けになりました。怪獣たちが持つ複雑なバックボーンも、時が経っても色褪せないシリーズの魅力と言えるでしょう。
(椎名治仁)