庵野監督だけじゃない、アニメ・実写の両方で活躍する名匠たち アクション演出の職人も
アニメも実写も映像作品であることは同じ。そのため時折、両方の分野で活躍する監督が現れます。今回は2次元と3次元の両方で結果を残した映画監督を紹介します。
実写に軸足を置く監督、アニメに軸足を置く監督
アニメも実写も映像作品であることに変わりはなく、基本的な方法論は同じです。そのため、時折両方の分野で活躍する監督が出てきます。
故・市川崑監督、ティム・バートン監督はアニメーター出身で、バートン監督はその後アニメ作品『ティム・バートンのコープスブライド』を監督しています。絶賛公開中の『シン・ウルトラマン』で監督を務めている樋口真嗣監督はどちらかと言うと実写に軸足を置いていますが、『ひそねとまそたん』などアニメも手掛けていますし、『シン・ゴジラ』の総監督、『シン・ウルトラマン』の企画・脚本を手掛けた庵野秀明監督は『新世紀エヴァンゲリオン』シリーズの生みの親です。
また、カルト的人気を誇る『AKIRA』の大友克洋監督は、映像作品では主にアニメの監督を務めていますが、実写映画版『蟲師』も監督しています。『踊る大捜査線』シリーズで知られる本広克行監督はアニメ『PSYCHO-PASS サイコパス』の総監督を務めていました。『セブン』、『ソーシャル・ネットワーク』、『Mank/マンク』などで知られる巨匠デヴィッド・フィンチャー監督は、アニメ作品『ラブ、デス&ロボット』の1エピソードを監督しています。
……という風に例を挙げ出すとキリがありませんが、今回は他にもいる実写とアニメの両方で優れた結果を残した監督をまとめてみました。
●ウェス・アンダーソン監督
『ザ・ロイヤル・テネンバウムズ』、『ムーンライズ・キングダム』でアカデミー賞の脚本賞候補、『グランド・ブダペスト・ホテル』で同賞の監督、脚本賞候補になるなど実写で多大な実績を残しているウェス・アンダーソン監督。
アンダーソン監督の作風は極めて特徴的です。脚本は癖のある登場人物が登場する群像劇で、演出はシンメトリー(左右対称)の構図を多用し、独特のテンポで物語が進みます。実写をメインにしている監督がアニメをやる、またはアニメをメインにしている監督が実写をやるとかなり印象に差が出る場合が多いですが、アンダーソン監督の場合、アニメをやっても実写をやっても驚くほど印象が変わりません。これまで『ファンタスティック Mr.FOX』と『犬ヶ島』の二本のストップモーションアニメ作品を手掛けていますが、独特の画面構成やテンポは実写の印象とほとんどそのまま一致します。
押井守監督は『機動警察パトレイバー』シリーズのアニメと実写両方で監督を務めていますが、こちらもアニメと実写の双方が驚くほど印象が変わりませんでした。ですが、自身がシリーズの生みの親である押井監督と原作あり(ロアルド・ダールの小説)の『ファンタスティック Mr.FOX』では、その意味合いが大きく違います。それだけ、アンダーソン監督の作家性が強いということなのでしょう。
『ファンタスティック Mr.FOX』と『犬ヶ島』は共にアカデミー賞の長編アニメ映画賞候補になっています。