2004年版『ULTRAMAN』が今になって再評価される理由 『シン』との共通点も
『シン・ウルトラマン』を観たウルトラマンファンから続々と上がる、2004年公開『ULTRAMAN』再評価の声。それでは『ULTRAMAN』とはどのような作品だったのか? 過去のウルトラヒーローとは一線を画す、大人も引きこまれるリアル路線の本作を振り返ってみましょう。
大人も引きこまれるリアル路線の『ウルトラマン』
山本耕史さん演じるメフィラスが一躍スターダムを駆け上がったり、掴みどころがないのに何故か愛おしくなるウルトラマンだったりなど、映画館を出てからも余韻が心地よかった映画『シン・ウルトラマン』。
現代的な解釈やリアルな作風から、2004年の映画『ULTRAMAN』を思い浮かべたウルトラマンファンも多いはず。映画『ULTRAMAN』(※)とは、『シン・ウルトラマン』と同様のリブート作品であり、大人も引き込まれるリアル路線として企画されたものでした。
※マンガとNetflixで展開中の『ULTRAMAN』と、実写映画版『ULTRAMAN』は別の作品です。
主人公の「真木舜一」は、別所哲也さん演じる航空自衛隊のパイロット。飛行中に赤い光と衝突した彼は、知らない間に宇宙生命体(ウルトラマン)と同化したおかげで無事生還を果たします。
そんな彼を未知の危険因子と決めつけ、捕えようとするのは、陸上自衛隊の管轄である対バイオテロ研究機関「BCST」です。実は海自の操縦士「有働貴文」が謎の生命体に寄生され、凶暴化した事件があったため、真木も同じ存在だと決めつけて身柄を拘束しようとしていたのでした。
ウルトラマンをその身に宿した真木と、ネズミやカラスといった他の生物を取り込みながら怪獣化していく有働。急速に「進化」した両者は、ついに決戦の刻を迎える――。
『ULTRAMAN』も『シン・ウルトラマン』も、従来の『ウルトラマン』シリーズから世界観を切り離し、まっさらな状態から初代『ウルトラマン』のアレンジを描いた点では同じでした。また極力リアルな描写を心がけつつ、大人でも引き込まれる要素を前面に押し出している点でも同じであり、『ULTRAMAN』は『シン・ウルトラマン』が目指した路線の原点とも言うべき作品です。
『ULTRAMAN』が指針にしたのは、ティム・バートン版『バットマン』やサム・ライミ版『スパイダーマン』のような、大人にも人気の作品づくりでした。もともと『バットマン』は大人を取り込むアメコミ映画として企画されたものであり、『スパイダーマン』はその方法論を進化させてヒットさせた作品です。そのメソッドは今や、『ウルトラマン』シリーズに限らず、さまざまなヒーロー映画や実写化作品でも取り入れられています。
それでは具体的にどの要素が「大人を取り込む作品」だったのか? 『シン・ウルトラマン』とも共通するその部分について紐解きたいと思います。
●特徴は「人間ドラマ」「SF要素」「ファンサービス」
『ULTRAMAN』がほかの『ウルトラマン』シリーズともっとも異なる点が、人間ドラマに重点を置いたところです。
主人公の真木舜一は家族想いの34歳。難病を患う息子のために空自を退官して民間航空会社に転職します。さらにバトルにおいても家族を守りたいと思う気持ちが彼の心の支えとなっていたりします。
また幼少期から空を飛ぶことに憧れており、ウルトラマンになったことで奇跡的にその夢を叶えました。蒼空を飛翔しながら歓喜の声を上げる真木に、胸が熱くなった方もいたのではないでしょうか。
『ウルトラマン』シリーズといえば、オモチャを売るために変身アイテムをハデにしたり防衛組織を登場させたりします。しかし本作にはその縛りがなく、「実際にウルトラマンや怪獣が出現したら……」という視点からリアルな世界観にアプローチしています。それが一層の「リアル」を引き立てているのです。
主人公の掘り下げで言えば、『シン・ウルトラマン』でも斎藤工さん演じる神永新二が辞書で地球の文化を学んだり、山本耕史さん演じる外星人メフィラスが地球の文化を愛しているような描写があったりしました。特にメフィラスについては、山本耕史さんの演技が好評で、メフィラスのスピンオフ映画が見たいと思ったファンも多いはず。
もともと『ウルトラマン』シリーズは予算の関係で人間パートを多く入れる傾向がありました。たとえば、初代『ウルトラマン』で科特隊の隊員がそろってハヤシライスを食べるシーンや、ハヤタ隊員がベータカプセルと間違えてスプーンで変身しようとしたシーンが印象深いファンも多いでしょう。生活感が感じられるシーンや、人間性を掘り下げる些細な描写を意図的に入れることでリアルな世界観が構築され、その結果として感情移入度が上がり、大人でも引き込まれる作品になったのではと考えられます。