何故?当然?『ゴールデンカムイ』のTV放送できずOVAになった回3選 姉畑先生の勇姿
「週刊ヤングジャンプ」で連載された人気マンガで、TVアニメも三期まで放送されている『ゴールデンカムイ』ですが、TVではカットされ、後にコミックス同梱版のDVDとしてアニメ化されたエピソードがいくつか存在しています。原作でも特に重要かつインパクトの強いエピソードばかりなのですが、なぜTVでは放送できなかったのでしょうか?
いつかこの恋を思い出してきっと泣いてしまう、「親分と姫」のエピソード

「週刊ヤングジャンプ」でに連載された人気マンガで、TVアニメも三期まで放送されている『ゴールデンカムイ』ですが、アニメ化されていない部分も存在します。いくつかのエピソードはカットされたままですが、後にコミックスにDVDで同梱される形でOVA化されたものもありました。今回は、数多くの変態が登場する『ゴールデンカムイ』のなかでも、特に強烈な珠玉のエピソードのOVAを紹介します。
●ヤクザ同士の純愛が衝撃「モンスター(親分と姫)」編
「モンスター編(親分と姫)」は単行本19巻に同梱する形でアニメ化されたエピソードで、原作の63話から69話が該当します。アシリパ(リは小文字)さんの大叔母の家に伝わる花嫁衣装を取り戻すため、アメリカ人牧場主・エディー・ダンに協力して、「モンスター」と呼ばれるヒグマを退治することになった杉元たち。しかし、ヒグマが巣食う森に乗り込んだ杉元たちは3頭のヒグマに追われ、やむなく農家へと逃げ込みます。
そこで出会ったのが、若山輝一郎(わかやまきいちろう)と仲沢達弥(なかざわたつや)でした。実はこのふたり、キロランケが競馬で八百長の指示を無視し博打で大損をしたために後を追ってきたヤクザであり、親分の若山は素性を怪しんだ杉元に長ドスで襲いかかります。切りかかる瞬間は別の方向を見ているのか、それとも目をつぶっているのか、どちらとも取れるような描写となっているにも関わらず、鋭い太刀筋、見事な構えを見せてくれるのが印象的なシーンです。
その後、ヒグマの脅威に晒されるなか、次第に人間同士で共闘せざるを得ない状況に追い込まれ、二転三転のあげくに若山と仲沢は死亡。それまでに両者の真の関係が明らかになる一連のシーンは、筆者もリアルにお茶を噴き出してしまうほどの衝撃がありました。そして、最後は美しい「純愛」を見せています。
難波日登志(三條なみみ)監督のインタビューによると、TVアニメ化の際には話数の都合上カットされたようですが、後にOVA化されたのは1ファンとして感謝したいです。若山役が銀河万丈さん、仲沢役が田中秀幸さんという豪華キャストとなり、話題を呼びました。
●白石の過去が明らかに「恋をしたから脱獄することにした」編
杉元たち一行のコメディリリーフでもある脱獄王・白石由竹の過去エピソードは、単行本17巻に同梱される形でアニメ化されました。原作では、9巻に収録された84話から85話に該当します。
白石は赤子のころに寺に捨てられ、少年のころから素行不良で、幼年監獄(現在の少年院)に収監されるたびに脱走を繰り返していたため、成人後も常に脱獄を警戒される存在でした。
明治維新後の内乱によって、国事犯(政治犯)が激増したために建設された樺戸集治監(後の樺戸監獄)に収監されていた白石。彼は紙幣偽造の罪で捕えられている贋作のプロ・熊岸長庵(くまぎしちょうあん)と出会い、長庵が描いた「シスター宮沢」の絵を見ているうちに、彼女に恋をしてしまいます。そして、白石はどこかの監獄で奉仕活動をしているはずのシスターに会うため、日本各地の監獄に収監されては情報を集め、脱獄を繰り返し、いつしか「脱獄王」の異名で呼ばれるようになりました。そしてついに、シスター宮沢を見つけ出した白石でしたが、彼が目にしたのは……。
同エピソードは白石の掘り下げには重要ですが、直接本編に絡める必要はないため、カットされたものと思われます。彼の凄すぎる脱獄テクも次々披露されるので、白石ファンにとっては、うれしいアニメ化だったのではないでしょうか。