所ジョージ、なぜアニメ声優だとカタブツ役?『トイ・ストーリー』バズがハマり役なワケ
国民的タレント・所ジョージ。「自由人」「陽気」「お茶目」など陽気さが前面に出たタレントイメージなのに対し、『トイ・ストーリー』バズなど、彼が演じるキャラクターはカタブツなイメージがあります。なぜ、所ジョージさん本人のイメージとギャップがあるのに、彼が演じるキャラには独特な魅力が宿っているのでしょうか。
本人のイメージと違う? 所ジョージさんが演じるアニメキャラ
所ジョージ。コメディアン・シンガーソングライター・俳優と、多彩な才能を発揮し、1990年代から30年近くに渡って複数の冠番組を持ち続けるなど、弱肉強食の芸能界でつねに第一線で活躍し続ける名タレントです。
多趣味・多芸・多才で知られる所ジョージさんは、「自由人」「陽気」といったタレントイメージがあります。しかし、彼が「声優」として演じるキャラクターは、本人とイメージがガラッと変わってきます。
声優代表作といえば、ディズニー&ピクサーの名作『トイ・ストーリー』のバズ・ライトイヤー、2004年公開の宮崎駿監督によるジブリ映画『崖の上のポニョ』のフジモト。世代によっては、1989年よりNHKにて放送されていたアメリカのホーム・ドラマ『アルフ』のアルフを思い浮かべる人も多いでしょう。
なかでも、バズとフジモトは「カタブツで気難しい」性格が先立つキャラクターで、自由人で陽気な所ジョージさんのタレントイメージとギャップがあるように見えます。しかし、彼にしか演じられない独特な魅力を放っています。それはなぜなのでしょうか。
●アルフ・バズ・フジモト…所ジョージさん演じるキャラの共通点とは
声優としてのキャリア初期を振り返ってみると、最初に演じたアルフは、実は本人のパブリック・イメージと一致した役でした。惑星外からやってきた宇宙生物アルフの愉快な振る舞い、それを絶妙なトボけたトーンで演じる所ジョージさん。作品の核とも言える彼の芝居に魅了されたファンも多く、『アルフ』で共に演じた俳優の小松政夫さんは「(所が)そのまんまアルフみたいな気がします。人間的にも」と評するほどです。
対して、『トイ・ストーリー』のバズや『崖の上のポニョ』のフジモトはどうでしょう。
バズは、人間の少年・アンディの誕生日にプレゼントとしてやってきた、流行のスペースレンジャーのおもちゃ。しかし、はじめは自分がおもちゃではなく、本物のスペースレンジャーだと信じて疑わず、「空を飛べるんだ!」と仲間たちに豪語するなど思い込みの激しい一面が前面に出ていました。
もう一役のフジモトは、人間を辞めて海の住人となった魔法使いであり、主人公であるポニョの父親。人間を「忌まわしい生き物」と嫌うフジモトは、宗介との出会いを通じて「人間になりたい」と願うポニョに猛反対します。作中を通じてポニョの身を案じるその姿は、ある意味で頑固親父だとも言えるでしょう。
ストーリー上の役割とはいえ、両者ともにカタブツで気難しさが先立つキャラクターであり、友人や仲間からの理解がうまく得られないといった共通点があります。
そんなひと捻りあるキャラクターを、より一層輝かせるのが所ジョージさんの演技です。フジモト役では滋味あふれる演技で作品に深みを与え、バズ・ライトイヤー役では飾り気のないマジメな声色が、唐沢寿明さん演じる相棒ウッディと好対照をなしています。
1995年の初作から2019年の4作目までの約23年に渡り、バズを演じてきた所ジョージさん。本人はバズの演技について「(バズを演じる上では)意識していることなんてない」「だって私が頭おかしいから。バズは素のままで演じていると思う」と語ります。ふだんの飄々とした面持ちとは違ったキャラクターであっても、彼は彼らしさを忘れることなく演技してみせているのです。
アルフ、フジモト、バズ・ライトイヤー。一見するとかけ離れた3役ですが、実は共通点があります。それは「忘れられぬ子供心」を持っていること。宇宙人、魔法使い、オモチャの宇宙パイロット、彼らのキャラ造形のいたるところに童心や幼心をくすぐる魔力があります。
ここで、所ジョージさんがいつもユーモラスな立ち回りで多くの視聴者から愛され、自分の趣味性を前面に出し自由に活動していることを思い出してみてください。彼はまさしく童心や幼心をくすぐるような活動を長年続けてきており、この3役を演じるに適したパーソナリティを持っていることに合点がいくはずです。
所ジョージさんが声優を務める作品は決して多くはありませんが、そのパーソナリティ・活動キャリア・イメージ像と、キャラクターのコアな部分がリンクし合った配役になっているのです。
(草野虹)