「ゲームの説明書」はナゼ消えた?ワクワク詰まった小冊子が去りゆく4つの背景
かつては、ほぼ全てのゲームソフトに「紙の説明書」が付属していました。ですが、現在のゲームには紙媒体の小冊子はほとんど付かなくなっています。操作方法や遊び方が書かれた、ゲームプレイには欠かせないと思われていた説明書は、なぜ消えてしまったのか。
プレイ前に、気持ちを高揚させてくれた「ゲームの説明書」
「唯一生き残れるものは、変化できる者である」と唱えたダーウィン。変化と無縁でいられる業界はまず存在しませんが、日進月歩で進化し続けるゲーム業界は最たる例のひとつと言えます。
ゲーム業界において、目に見えて分かる大きな変化のひとつは、小冊子形式の「説明書」の衰退です。保護ケースのなかに必ず封入されていた説明書は、今や絶滅の危機に瀕しています。
「ゲームの説明遺書」はどこへ消えたのか。なぜ衰退していったのか。変わりゆくゲーム文化の一端を、消えゆく小冊子の視点から眺めてみましょう。
●ただの操作案内ではなかった「ゲームの説明書」
今日のような通販やDL販売がなかった時代、ゲームはお店に行って購入するものでした。徒歩圏内にゲーム屋がない場合も多く、電車で大きな町へ行き、そこで買った方も多いでしょう。
帰り道。買ったばかりのゲームに期待を寄せつつ、車内で「ゲームの説明書」を読むひとときは、ワクワクが何倍にも膨れ上がる至福の時間でした。操作方法の把握はもちろん、世界観やあらすじを読んで想像を広げ、登場キャラクターをチェックしては新たな出会いに想いを馳せる──それは、冒険の入り口を覗き込むようなトキメキです。
こうした「ゲームの説明書」文化は、ファミコン時代から連綿と受け継がれてきましたが、任天堂ハードならWiiからWii U、PlayStation系列だとPS3からPS4の辺りで、小冊子としての説明書が急速に衰退し、次第に見かけなくなります。
胸を高鳴らせた説明書が、不要の存在へと移り変わったゲーム業界。一体何があって、「ゲームの説明書」は姿を消そうとしているのでしょうか。
●説明書の役目を奪っていく、親切丁寧なチュートリアル
「ゲームの説明書」の役割として最も大きいのは、操作方法の説明。くだけた言い方をすると、「このゲームをどうやって遊ぶのか」のレクチャーです。ほぼ全ての家電に説明書があるように、ゲームにとっても説明書は不可欠な存在でした。
しかし、小冊子による事前の操作説明を不要とする進歩が、ゲーム内に訪れました。それは、「チュートリアルの充実と定番化」です。ゲームをどうやって遊べばいいのか、紙媒体で紹介するのではなく、実際にゲームを遊びながら伝える方法が取り入れられ、今やすっかり定番と化しました。
遊び方をゲーム内で伝えるチュートリアルの発想は、古くはファミコン時代からありました。例えば、初代『ドラゴンクエスト』が当てはまります。キャラに話しかけ、アイテムを取得し、そのアイテムを適切に使わなければ、冒険が始まりません。こうした実際の手順を通すことで、プレイヤーは「遊び方」を自然と身につけていきます。
チュートリアルの片鱗はファミコン時代からあったものの、まだまだ一般的とは言えず、操作説明などを説明書で済ますゲームが大半でした。しかし時間が経つにつれ、チュートリアルの価値と認知度が高まり、今では多くのゲームが何らかのチュートリアルをゲーム内に用意しています。
説明書だと流し読みも可能ですが、ゲーム内のチュートリアルだと実際に入力しないと先に進めない場合が多いので、半ば強制的に操作を学ぶことになります。その賛否はともあれ、より確実にゲームを理解する手段としてチュートリアルが活用されており、相対的に「説明書」の重要性が下がっていきました。