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「ゲームの説明書」はナゼ消えた?ワクワク詰まった小冊子が去りゆく4つの背景

時代の変化に伴い、消えていく紙媒体の「説明書」

現行ハードのソフトには、ほぼ紙の説明書がつかない
現行ハードのソフトには、ほぼ紙の説明書がつかない

●説明書にも押し寄せる「電子化の波」

 物理的な「ゲームの説明書」の立場が弱くなった理由はもうひとつあり、それはDL版の普及です。時代的にはWiiやPS3の頃から広まっていき、今では「DL版しか買わない」というユーザーもかなり増加しています。

 DL版は全てデジタルなので、紙の小冊子としての「ゲームの説明書」は当然ついてきません。その代わり電子版の説明書が用意されており、その内容は小冊子と同様。本来の役割を十分果たしています。

 DL版には電子の、パッケージ版には小冊子の説明書を付属させる。この手法は、見方を変えれば二度手間とも言えるでしょう。しかし、パッケージ版でも電子の説明書を読めるようにすれば、用意するのは電子版だけで済みます。そうした背景から、電子化への1本化が進みました。

 ちなみに、DL版に小冊子をつけるという手も物理的には可能ですが、送料が発生して余分な出費が増えますし、住所登録などの手続きも煩わしいため、ユーザー側のデメリットが大きく現実的ではありません。

 DL版という新たな選択肢が、説明書の電子化を促進。手間の軽減から電子化に統一されつつあるのも、紙媒体の説明書が衰退した主な理由のひとつです。

●生産費用や在庫リスクを踏まえたコストカットの影響も

 説明書の電子化は、手間の軽減も含みますが、もうひとつの理由に「費用の削減」があります。データ上の存在であるDL版は、何本生産しても物理的なリソースは必要ありません。生産そのものにはコストがかからず、製造時間も不要です。

 しかしパッケージ版は、ゲームディスクやゲームカードを物理的に生産し、それらを守る保護ケースも用意し、そこに封入しなければなりません。いずれも生産に費用がかかり、また相応の製造時間もかかります。

 作り過ぎれば、余った分はそのまま損失になります。しかし売り切れれば、再生産には時間を要し、その空白期間が機会損失に繋がります。どれだけ生産するのがベストなのか、事前にその正解にたどり着くのは困難です。

 そこに「紙の説明書」が加わると、1本辺りの生産コストはさらに増します。また余った時は、説明書の分の損失が上乗せされるのも悩ましい点です。

 パッケージ版の場合、ゲームソフトそのものや保護ケースを省くことはできません。しかし、説明書は電子化が可能。その分の生産コストや在庫リスクを回避できるとなれば、費用削減の観点から見ても、紙の説明書が消えゆくのは無理のない話かもしれません。

●「説明書」の需要は、ユーザー側でも意見が分かれる

 定番化したチュートリアルの存在、DL版の普及に伴う説明書の電子化と一本化、生産時における費用の削減など、様々な理由で「紙の説明書」が廃れていきましたが、大きな理由はもうひとつあります。しかもそれは、ゲームを作る側ではなく、それを遊ぶプレイヤー側の事情が関わる話です。

 最初に触れた通り、小冊子の説明書をワクワクしながら読むゲームファンは間違いなく存在します。ですが、それは全員ではありません。楽しく読む方がいるのと同様に、説明書を全く読まない人たちもいるのです。

 チュートリアルの発達により、そうしたユーザーが増えた面はありますが、ゲーム内の説明がまだ不十分だったファミコン・スーファミ時代にも、説明書を読まない派が一定数いました。これは良し悪しではなく、タイプの違いと言うほかありません。

 楽しみにしている方もいれば、全く読まない人もいる。それは、「必ずしも全員が必要とはしていない」と受け取ることもできます。人を選ぶ楽しみだとすれば、優先順位を下げようと考えるのも無理のない話でしょう。そこに、電子化での代替やコスト面のリスク低下などが加われば、小冊子の廃止も止むなし。こうした複数の背景が絡み合った結果、パッケージの簡素化が進み、「紙の説明書」が消えようとしているのです。

●「紙の説明書」をかろうじて継続するメーカーもあるが…

 小冊子としての「ゲームの説明書」を好んできた方にとっては、この状況は残念のひと言に尽きます。一部のメーカーでは、薄めながら小冊子を付属させているケースもあり、例えば『イースIX -Monstrum NOX-』(日本ファルコム)や『地球防衛軍5』(ディースリー・パブリッシャー)などのパッケージ版に、12ページほどの「ゲームの説明書」が封入されています。

 なかには、往年のボリュームに負けない30ページ超えの説明書を用意した『閃乱カグラ Burst Re:Newal』(マーベラス)などもありましたが、全体的な傾向はペーパーレスに傾いており、何らかのブレイクスルーでもなければ、紙の説明書はこのまま消え行くのみです。

 ダーウィン曰く、変化できない存在は生き残れない。だとするなら、紙の説明書が途絶える流れも、恐れずに受け入れるべき変化なのかもしれません。その結論が出る時期は、もう目の前まで来ているのでしょう。

 ゲームの説明書は、どこに消えていくのか。せめて、その最後の姿を見届けたいものです。

(臥待)

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