センベエ博士は天才かも? 『Dr.スランプ』の愉快すぎる発明品たち
新しい発明品が登場するたびに大騒動
●礼儀正しい時間旅行マシン「タイムスリッパー」
夢の発明の定番といえば映画・小説・マンガ界問わず、まずはタイムマシンですよね。センベエ博士発明の「タイムスリッパー」は、目覚まし時計に手足がついたような「タイムくん」と、表面がつるつるの「ツンツル板」で出来ており、タイムくんが板の上でつるっと滑る(スリップ)ことで、時を超えるというマシンです。マシンとはいえ、そこは鳥山作品。タイムくんは起動すると、自分の意思で動いて話すという人間味あふれるマシンなのです。というかもはや生命体? アラレちゃんをはじめ、センベエ博士の発明品には魂が宿っているケースが多いのも、心ひかれちゃうところです。
タイムくんのおしゃべりは実に礼儀正しく、「本日のご乗車まことにありがとうございます」や「本日はさいわい好天にめぐまれまして」などの車掌さん的な丁寧なごあいさつから始まりますが、このあたり、実は真面目なセンベエ博士の性格が反映されているのでしょうか?
ちなみに、この「タイムスリッパー」で原始時代に行き、持ち帰った卵からかえったのがガッちゃんということで、『Dr.スランプ』にはなくてはならないマシンなのです。
●センベエ博士のエロ心が生んだ「ホンモノマシーン」
大きな電気釜に手足がついたような形で、中に画像を入れてお湯を注ぎ、よ~くかき混ぜると画像が本物となって出てくるという夢のような機械が「ホンモノマシーン」。こちらも「タイムスリッパー」同様、動いてしゃべってと親しみやすさ抜群です。紹介されれば「はい! はくしゅはくしゅ~」、画像が入れば「えらっしゃい!!」、そしてかき混ぜ作業も、自ら音楽に合わせてダンスしてくれるという、超ファンキーマシーンです。
センベエ博士はデモンストレーションでは上天丼を実体化していましたが、実は本当の目的は、雑誌のちょっとエッチ系オネエサンを本物にすること。「どの女の人にしよかなーっ!」とページをめくったり、スーツに着替えたりとワクワクですが、もちろん、アラレちゃんたちにジャマされてうまくいかないというのはお約束。
それにしても、名店の味も高級家電も憧れのスターも……切り抜き画像さえあればぜ~んぶ本物が出てくるなんて、人としてダメになりそうな最強の発明品な気がします。
●使い方が危険な「アラレ目テレビジョン」
センベエ博士が、寝ているアラレちゃんにこっそり取り付けたのが「アラレ目テレビジョン」。アラレちゃんが見ている映像をそのままテレビ画面に映せるという装置です。アンドロイドに映像を飛ばす機能をつけるだけなので、博士の発明のなかでも極々簡単なものだと思われますが、使い方を間違えると一騒動に。
もともとは、無鉄砲なアラレちゃんの行動を監視しようとしたものなのですが……アラレちゃんがセンベエ憧れの山吹先生のスカートをめくってパンツを見たことから、物語は急展開します。博士は、山吹先生の裸を見ようと、アラレちゃんが先生といっしょにお風呂に入るように画策するのです。
これでは盗撮ですから、れっきとした犯罪になってしまいます。もちろん「週刊少年ジャンプ」誌の人気マンガでそれが成功するワケもなく、超近眼のアラレちゃんがお風呂でメガネを外して何も見えなかった……というオチでした。でも、誰かの目になって見る世界は、新鮮でしょう。ちょっと体験してみたい気がします。
他にも、「○年先」と指定することで被写体の未来の姿が写る「みらいカメラ」や、生命体だけが見える「非生命体透過メガネ」(またしても山吹先生の裸を見ようとしていました…)、光線を浴びせてモノを自由に大きくも小さくもできる「デカチビ光線銃」、変身させたいものの名前を呼びながらボタンを押せば何にでも変えられる「変身ポンポコガン」、見た目も操作法も自動車のまんまながら、ちゃんと宇宙にまで行けちゃう「宇宙船」などなど……。
センベエ博士の発明品は、28才独身(連載スタート時)の博士のよこしまな動機から生み出されたものも多々ありますが、そこには夢もたっぷり詰まっていました。毎日が楽しくなりそうな発明品がいっぱいの『Dr.スランプ』、改めて読み返してみませんか?
(古屋啓子)