『エヴァ』『ナウシカ』にも影響大!唯一無二の漫画家・諸星大二郎の絶対読むべき作品
まずは読んでほしい!おすすめしたい諸星作品とは
1970年のデビューから50年以上、独特な「諸星ワールド」を描き続けてきた諸星大二郎先生の膨大な作品のなかで何を読めばいいか迷ったら、まずはこの3作品からおすすめします。
●『暗黒神話』
『暗黒神話』は1976年に「週刊少年ジャンプ」で連載され、「伝奇マンガの金字塔」とも呼ばれる初期の代表作です。主人公の少年は父の死の謎を追ううちに、宿命の渦に飲み込まれていくのですが、物語にはヤマトタケル伝説や、神話、遺跡、宗教などの要素が緻密に組み込まれています。さらに話は宇宙の成り立ちにまで及ぶという、壮大なストーリーです。
庵野秀明監督は諸星先生との対談で、ひとりの少年が世界を背負うという設定に「ものすごく惹かれた」と話していますが、これはまさに『エヴァ』の碇シンジと通じるところでしょう。また、旧劇場版『新世紀エヴァンゲリオン劇場版 Air/まごころを、君に』のラストシーンにも『暗黒神話』の影響があると話しており、『エヴァ』ファンにもぜひ読んでいただきたい1冊です。
●『妖怪ハンター』
沢田研二さん主演で映画化(『ヒルコ 妖怪ハンター』)もされた『妖怪ハンター』は、考古学者の稗田礼二郎が、日本各地で遭遇する奇怪な現象や事件を、古文書や伝承などから読み解いていく物語です。『妖怪ハンター』というタイトルではありますが、妖怪とのバトルがあるわけでなく、歴史ミステリーの要素が強い連作です。
題材は、平家伝説、瓜子姫伝説、河童伝説など興味深いものばかりですが、なかでも隠れキリシタンを題材にしたエピソード「生命の木」は、名作中の名作。「おらといっしょに ぱらいそさ いくだ!!」の名ゼリフは忘れられません。
●『マッドメン』
この作品は、古代日本とパプアニューギニアを結ぶ謎を追う物語です。島の伝説、少年の刺青の秘密、大いなる精霊の存在、そして日本の神話とのつながり……など、舞台を南の島にしても、やはり諸星ワールドが炸裂しています。宮崎駿監督の『もののけ姫』にも影響を与えたと言われ、ミュージシャンの細野晴臣さんは、この作品に触発されて「THE MADMEN」という曲を書き上げたそうです。
他にも、手塚賞を受賞したものの、あまりの完成度に無名の新人の作品とは思えないと盗作を疑われた初期作『生物都市』、西遊記をモチーフとした超大作『西遊妖猿伝』など、ご紹介したい作品はまだまだあります。ぜひ、諸星作品の扉を開けて、その世界に触れてみてください。
(古屋啓子)