「金ロー」で『時をかける少女』放映 失敗を繰り返す「細田ヒロイン」の原点
「金曜ロードショー」の夏といえば、細田守監督の劇場アニメが「スタジオジブリ」作品と並んで定番となっています。細田作品=夏のイメージが確立したのが、2006年に公開された『時をかける少女』です。最新作『竜とそばかす姫』など、他の細田作品とも共通する主人公&ヒロイン像について掘り下げてみます。
2週連続で「細田守祭り」開催
「行っけっえ~!」
女子高生・紺野真琴が全力で躍動するシーンが心地よく描かれているのは、細田守監督の劇場アニメ『時をかける少女』(2006年)です。真琴役を演じたのは当時16歳だった新人女優の仲里依紗さんです。声優初挑戦となった仲さんは、とても瑞々しい声の演技を披露してみせました。
細田監督は東映動画(現・東映アニメ)を退職し、フリーになっての第1作が、このアニメ版『時かけ』でした。公開当初はわずか6館だけでの上映でしたが、口コミで評判が広まり、最終的には全国100館で上映されるロングラン上映作となりました。興収は2.6億円にとどまったものの、アヌシー国際アニメーション映画祭で長編部門特別賞を受賞するなど、細田監督の快進撃は『時かけ』から始まります。
2022年7月1日(金)の「金曜ロードショー」(日本テレビ系)では『時をかける少女』、7月8日(金)は細田監督の最新作『竜とそばかす姫』(2021年)が2週連続でオンエアされます。細田作品に共通する主人公やヒロインたちの、「ある特徴」をクローズアップしたいと思います。
「大林版」からイメージ一新したアニメ版
SF作家・筒井康隆氏が1965年~66年に学習誌で連載したジュブナイル小説『時をかける少女』は、1971年にNHK総合の「少年ドラマシリーズ」で『タイムトラベラー』という題名でTVドラマ化されました。さらに大林宣彦監督が実写映画『時をかける少女』(1983年)を放ち、芳山和子を演じた原田知世さんが歌う同名主題歌も大ヒットしました。
その後も、『時かけ』は何度もTVドラマや実写映画化されてきましたが、多くの作品は大林版を踏襲したものになっていました。大林版『時かけ』は青春時代のノスタルジーさが濃厚に漂う作品でしたが、それから20年後の世界を描いた細田版『時かけ』は、がらりとイメージを変えています。
大林版『時かけ』の主人公だった芳山和子は清楚な雰囲気でしたが、修復画家となった和子の姪にあたる真琴はとても行動的です。思い立ったらじっとできず、走り出してしまうタイプです。ノスタルジーさに囚われることなく、真琴は今をエネルギッシュに生きています。
そんな真琴は、幼なじみのクラスメイト・功介、転校生の千昭と一緒に、公園のグランド(東京都中野区にある哲学堂公園がモデル)でキャッチボールを楽しむ日々を送っていました。真琴たちは高校2年生なので、来年は受験勉強に没頭することになります。のんびり楽しめる最後の夏休みを間近に控えた真琴たちの日常生活が、ディテールたっぷりに描かれています。
真琴、功介、千昭のビミョーな三角関係に、胸がキュンとさせられます。