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映画『バズ・ライトイヤー』の楽しみどころは「ウラシマ効果」 異なる価値観には戸惑いも

中国や中東で上映禁止となった問題シーン

アリーシャと絆を深めるバズだが、地球への帰還を掛けた行動が思わぬ展開に……
アリーシャと絆を深めるバズだが、地球への帰還を掛けた行動が思わぬ展開に……

 ピクサー&ディズニーの共同製作による『バズ・ライトイヤー』では、バズがほんの数分間のハイパー航行の実験を行う間に、レンジャーに同期入隊したアリーシャは結婚し、家庭を持ち、子供はどんどん大きくなっていきます。その様子を、バズは断片的に垣間見ることになります。アリーシャの幸せを願うのと同時に、どこか寂しげな表情も見せるバズでした。

 アリーシャが結婚相手に選んだパートナーが、バズのような勇猛なヒーロータイプではないところも、新しい時代のSF作品だなぁと感じさせます。

 中国や中東など14か国で『バズ・ライトイヤー』が劇場公開されないのは、アリーシャと結婚相手がキスするシーンが問題になっているからだと報じられていますが、実際のシーンはとてもサラリと描かれています。時間の流れだけでなく、多様化する社会の流れからも取り残されてしまったバズの孤独さを感じさせるシーンではないでしょうか。

 頭では理解できても、感情面ではすぐには受け入れられないことが人間は多々あります。脳と心の間にラグタイムが生じるのも、生きている人間だからだと言えるでしょう。

世代も価値観も異なる新しいバディ

 序盤だけでも、自分の道を最後まで貫き通そうとするバズの古風な生き方にウルッとさせられるのですが、バズに新しい相棒が現れるところから、本作のメインストーリーが始まります。バズの新しい相棒役に志願するのは、アリーシャの孫娘・イジーでした。

 バズと若いイジーは世代も違えば、不時着した惑星に対する認識も大きく異なります。バズにとっては、あくまでも地球こそが母なる故郷です。みんなを地球に連れ戻すために、バズは危険なハイパー航行実験を繰り返してきたのです。ですが、イジーは不時着した惑星で生まれ育っています。この辺境の惑星こそが、彼女にとっての故郷なのです。

 世代も物事の価値観も異なれば、レンジャーとしての経験値も異なります。そんなバズとイジーは、はたしてバディとしてうまく機能するのか。本作のいちばんの見どころです。

 また、ネコ型ロボットのソックスが、見た目と違って意外なほどに大活躍し、バズたちを襲う巨大ロボットは『トイ・ストーリー2』(1999年)でおなじみのバズの宿敵「ザーグ」そっくり。多くの見どころが用意されています。

「無限の彼方に!」

 バズの決めゼリフがかっこいい本作を観た後は、アンディ少年のようにバズのフィギュアが欲しくなってしまうかもしれません。

(長野辰次)

●『バズ・ライトイヤー』
監督/アンガス・マクレーン
キャスト/クリス・エヴァンス(鈴木亮平)、キキ・パーマー(今田美桜)、ピーター・ソーン(山内健司)、タイカ・ワイティティ(三木眞一郎)、デイル・ソウルズ(磯辺万沙子)、ジェームズ・ブローリン(銀河万丈)、メアリー・マクドナルド=ルイス(沢城みゆき)、ウゾ・アドゥーバ(りょう)

配給/ウォルト・ディズニー・ジャパン 7月1日より全国劇場公開中

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