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劇場版『イデオン』40周年 救いがない悲劇的アニメの「今ならありえない」イベントとは?

製作サイドとファンが一体となった「明るいイデオン」

富野監督による『戦闘メカ ザブングル』 画像は『ザブングル グラフィティ』 DVD(バンダイビジュアル)
富野監督による『戦闘メカ ザブングル』 画像は『ザブングル グラフィティ』 DVD(バンダイビジュアル)

「明るいイデオン」とは少し自虐的な名前ですが、ファンやスタッフに至るまで誰もが『イデオン』は暗い作品と認識していたので、それを逆手に取った戦略でした。

 当初は「現在日本で最高水準のアニメ作品」というキャッチコピーでイベントを行う予定だったそうです。おそらく劇場版『ガンダム』公開直前に行ったイベント「アニメ新世紀宣言大会」の成功体験から企画が進んだのでしょう。

 ところが、映画公開の年の2月から放送を開始した富野監督の新作TVアニメ『戦闘メカ ザブングル』を見て、その完成度の高さを知ったことから、そのコピーは使えないという話になりました。またしても皮肉なことに、同門の作品が『イデオン』の前に壁として立ちふさがったわけです。

 そこで方向転換して、『イデオン』とは無縁だった「明るさ」をキーワードにして、意図的にブームを盛り上げようとしました。この背景には、当時、流行りだした「アニパロ」というアニメ作品のパロディマンガや小説が、アニメファンの間でブームになっていたことも理由です。

 このイベントを盛り上げようとしたのは製作サイドだけでなく、関連企業とも言える当時のアニメ雑誌の執筆陣や編集者たちもスタッフと同じ扱いで協力していました。そのなかにはアニメ雑誌「月刊OUT」を中心に活躍していた漫画家のゆうきまさみ先生もいたそうです。しかも後述するTV特番ではナレーターまで担当していました。

 この「明るいイデオン」は、最終的に一般公募したアニパロ作品を『イデオン』の製作スタッフがイラストにしたり、アニメ作品にしてTV特番で放送したりという今では考えられない展開になります。『無敵鋼人ダイターン3』のオープニングパロディである『アジバ3』や、巨大特撮風に仕上げた『イデオンマン』など、本来の作品ではありえないパロディ作品のインパクトは絶大でした。

 また、「現在ではあり得ない」と言えば、劇場版の宣伝用に放送された映像のなかにはTVでは見られなかったキャラの死亡シーンや、本編のラストシーンに相当する場面もありました。これは事前にアニメ雑誌でも扱っていたので普通だと当時は感じていましたが、昨今のネタバレ禁止という風潮では考えられないことでしょう。

 筆者の個人的な感想では「明るいイデオン」は盛り上がったと感じていたのですが、後年の評価では辛らつな意見の方が多いようです。その理由として、この劇場版『イデオン』の興行収入がその年のアニメーション部門でもベスト5に入れなかったからでした。イベントとしてはすべったということかもしれません。

 しかし、単純な興行収入という数字はともかく、前述したように劇場版『イデオン』に高い評価を与えている人はアニメ関係者のなかにも多くいました。筆者も『イデオン』の持つテーマや演出は今現在でも高いものだと思いますし、劇場版はそれが結実した名作だと考えています。

 劇場版『イデオン』の評価とは別に、あの時代だからできた再現不能なイベント「明るいイデオン」。製作サイドとファンが一体となった一種のお祭りだったと思います。

(加々美利治)

【画像】カッコいい!「イデオン」の姿(7枚)

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