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アニメブームの影で、深刻な「人材不足」 業界改善のための文化庁事業「あにめのたね」とは?【PR】

「作画クオリティの基準が上がる」ことの功罪

 現場アニメーターにとって辛いのが、年々求められる作画クオリティが高くなっていることだと、後藤さんはいいます。とくに近年のTVシリーズでは、劇場版クオリティかと思われるほど、美麗な映像も見受けられます。

 視聴者や発注者にとっては、作画のクオリティは高いに越したことはありません。しかし、そのぶん手間がかかるため、「時間」というコストがかかります。

アニメーターの作画机のイメージ(画像:写真AC)

 さらに求められる作画クオリティが高いと、経験の浅いアニメーターの場合、基準に達しないこともあります。その際、作画の品質を維持するために、アニメーターから提出された原画の修正を行うのが「作画監督」と呼ばれるスタッフです。

 従来はTVアニメ1話あたり、ひとりの作画監督で担当することが多かったところ、最近では作業量の膨大さとスケジュールのひっ迫で、1話で複数人が作画監督を担当することも珍しくないといいます。こうした環境では中堅・ベテランアニメーターに仕事が過度に集中してしまう傾向があるそうです。

 納品が遅れると放送が「落ち」てしまい、違約金も発生してしまうという制約を抱えた制作スケジュールのなかでは、実業務と並行しながら若手の人材育成を行うのはなかなか簡単なことではないといえるでしょう。

「スタッフ」にも関心をもってほしい

 アニメスタッフにおける人材育成の問題は、何かひとつの明確な原因があるというよりは、さまざまな要因が重なりあった結果でしょう。後藤さんは業界全体で向き合わなければならない問題と語ります。

 その上で、私たちアニメファンに対しては「作品だけでなく、アニメーターなどスタッフにも注目して欲しい」と呼びかけます。

 かつてのアニメ雑誌では、アニメーターなどの特集もよく組まれていました。そういう雑誌を読んで「アニメーターになりたい!」「この人たちと一緒にアニメの仕事をしたい!」と憧れを持ち、業界に入ってきた人も多くいます。

「作品だけではなく、スタッフにも関心を持ってもらうことで、新しい人がアニメーション業界に入ってくる、業界がより良くなっていくきっかけにつながるのでは」と、後藤さんは話します。

 文化庁は、「弊庁はアニメ産業の人材を重視しています。我々としても、我が国のアニメーション文化の質の向上と発展に役立てるよう、今後も現場の声には耳を傾け、より良い事業を進めていきたいと考えています」と言います。

文化庁で「あにめのたね」事業を統括する吉井淳さん

 アニメ文化・産業の発展は、それを支える人材があってこそ。国と業界が協力して輩出する努力は欠かせないでしょうが、私たちアニメファンもクリエイターたちに目を向けることが業界改善の一歩となりそうです。

参照・出典
※1:アニメ産業レポート2021 サマリー | 日本動画協会

▼あにめのたね
https://animenotane.jp/

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