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「約束された神ゲー」はホントだった! 2023年ゲーム賞総なめ『バルダーズ・ゲート3』はファンタジーファン&コアゲーマーを唸らせる超大作RPG【プレイレポ&座談会】[PR]

驚異的な自由度! 「コアゲーマー」プレイレポ

海外ではひと足先に発売済みで、既に高評価を博している『バルダーズ・ゲート3』

 復習も兼ねて本作の概要から振り返ります。『バルダーズ・ゲート3』は、テーブルトークRPG(以下、TRPG)の元祖『D&D』をベースとするゲームシリーズの最新作で、行動順で個人が移動や戦闘を行うターンベースのRPGです。

 海外版が今年8月に正式発売されましたが、待望の国内版がPS5向けにいよいよ12月21日に登場します。発売に先駆け、本作の日本語版を先行プレイする機会に恵まれたので、その体験を通して『バルダーズ・ゲート3』ならではの魅力を皆様にお届けします。

トレンドとは真逆、なのに圧倒的高評価な『バルダーズ・ゲート3』

キャラメイクは複数用意されたパーツから選ぶ形なので、好みを見つける楽しみも

 本シリーズのベースとなった『D&D』は、プレイヤーたちがそれぞれひとりずつキャラクターを担当し、その性格を演じながら物事の解決に挑む会話形式のアナログゲームです。この遊び全般を「TRPG」と呼び、その最初の作品として生まれたのが『D&D』でした。

『D&D』を含むTRPGは、プレイヤーのほかにゲーム進行を司る「マスター」がおり、プレイヤーとマスターが会話を交わしながらゲームが進展します。核となるのが会話なので、解決方法はプレイヤーの発想次第で無限大に広がります。それが成功するかは、キャラクターの能力や発想の説得力にもよりますが、限りなく自由度の高い遊びと言えるでしょう。

 そんな『D&D』に刺激を受けたゲームのひとつに、『ウィザードリィ』があります。後のコンピュータRPG全般に大きな影響を与えた名作ですが、『D&D』がなければ『ウィザードリィ』もなかったかもしれません。『D&D』の存在は、コンピュータRPGの礎にも深く関わっているのです。

プレイ中に挟まるムービーも見ごたえたっぷり

 ですが、『ウィザードリィ』でも採用されていたターンベースのRPG(以下、ターン制RPG)は、徐々にそのシェアが少なくなっています。今では、海外のRPGはアクションRPGが主流となり、ターン制RPGはクラシカルでニッチな存在となりました。そしてこの傾向は、日本国内にも表れています。

 TRPGの元祖である『D&D』がモチーフ元で、ターン制RPGを採用した『バルダーズ・ゲート3』は、最近のトレンドに敏感なゲームファンから見ればレトロな印象を覚えるかもしれません。たしかに、歴史のある要素を多く取り入れているのは事実です。

 しかし『バルダーズ・ゲート3』は、古くて時代遅れのゲームでは決してありません。先行でリリースした海外版は至るところで高評価を博しており、Steamのレビューでは、96%が好評と回答しています。その勢いを受け、英国の歴史あるゲーム賞「Golden Joystick Awards」と、毎年12月に開催される世界規模のゲーム賞「The Game Awards 2023」ともに、2023年度の最高賞受賞を成し遂げました。

未知の対象に、どのように関わるのか。その判断も『バルダーズ・ゲート3』の醍醐味のひとつ

『バルダーズ・ゲート3』は、現在の主流となっているジャンルとは隔絶しているかもしれません。しかし、今あるトレンドに追従するのではなく、作品自体の魅力で「Game of the Year」の受賞をつかみ取った本作は、間違いなく世界的に支持された最前線のゲームに他なりません。

 国内版発売の前に、早くも揺るぎない評価を手に入れた『バルダーズ・ゲート3』ですが、どんな魅力があって高評価を博したのか。実際に味わったプレイ体験を通して、その一端に迫ります。

最近の「親切過ぎるゲーム」じゃ物足りない? 『バルダーズ・ゲート3』は「失敗してもいいゲーム」

敵を倒せば死体も残る、リアルな描写

『バルダーズ・ゲート3』をプレイして印象的だったのは、いわゆる「JPPG」との違いです。これはあくまで方向性の違いなので、優劣や上下の比較ではありませんが、日頃JPPGに慣れているユーザーにとっては新鮮な要素に映ることでしょう。

 昨今のRPGは、親切丁寧で負荷が小さく、例えば「次の目的地」「強化方法」「サブクエストの案内」などを明確に示しています。また、時間限定で終了するイベントを減らすor撤廃するといったゲームも多く、プレイヤーに「失敗」させないような配慮が行き届いています。

『バルダーズ・ゲート3』も、ヘルプを画面内にポップアップさせるなど、システム面のフォローはあります。しかし、ゲーム内容そのものを見た場合、露骨な誘導はありません。強化方法はプレイヤー自身が模索を繰り返し、サブクエストは自ら情報を集め、目ぼしい場所へ移動して見つけます。また、ゲーム進行に応じて終了するサブクエストも普通にあります。

選択ひとつで戦闘を回避できることもあれば、無用な戦を招くことも

 戦闘で行う攻撃の命中、会話中に行う「説得」や「威圧」、気づかれずに盗む「スリ」など、作中のあらゆる行為は、ダイスの目と能力の補正で成否を判定します。一般的なJRPGなら、攻撃すればまず命中するでしょう。しかし、本作の攻撃成功率は50%、60%も珍しくありませんし、敵味方ともによく外します。

 JPPGと比べた場合、『バルダーズ・ゲート3』は失敗が起こりやすいゲームかもしれません。ですが、露骨な誘導がないのは、自分の意志で世界を探索できることの裏返し。そして探索の先には、思わぬ出会いや驚きがしっかりと用意されています。

自分のキャラクターでは苦手な判定は、仲間に任せるという手も

 キャラクターの強化方法は多岐にわたり、どうやって強くなるかは自分次第。強みが異なる仲間を使い分けることで、さまざまな判定を有利に進められます。戦闘中の行動も、高所からの射撃、仲間からの援護、「隠れ身」を使うなど、命中率やダメージを上げる手段は枚挙に暇がないほどです。

 分かりやすい誘導は親切ですが、どうしても1本道にならざるを得ません。その点『バルダーズ・ゲート3』は、プレイヤーが選べる道が無数にあり、膨大な可能性を自ら掴み取る手応えは替えがたいもの。時に失敗もしますが、それでゲームが行き詰まることはありませんし、成功と失敗の混在こそが楽しいのだと本作は教えてくれます。

自由度が高く、試行錯誤が楽しいターン制バトル

「攻撃は、当たるのが当たり前」というJRPGのあるあるも、『バルダーズ・ゲート3』では事情が変わる

『バルダーズ・ゲート3』のバトルは、行動順によるターン制を採用しており、フィールド上にいる敵味方が順番に応じて行き交います。

 順番が回ってきたキャラクターは、「移動」「アクション」「ボーナスアクション」という3種類の行動をそれぞれ実行できます。基本的には、いずれも1行動順に1回ずつですが、条件を満たしたりスキルの効果などで、複数回行える場合もあります。

 フィールド上がバトルの舞台ですが、シミュレーションRPGのような「マス目」はありません。移動できる距離の範囲で、好きな場所にキャラクターを動かせます。また、移動を一度に全て行う必要はなく、移動して攻撃(アクションのひとつ)した後、移動距離が残っていれば、再度の移動も可能です。

 物陰から出て敵を弓矢で攻撃し、その後また物陰に隠れる──といった、ヒットアンドアウェイ的な立ち回りもアリでしょう。ただし、これを近接攻撃で行うと、接敵した相手から離れる時に「機会攻撃」を食らうのでご注意ください。なお、この「機会攻撃」を回避する手段もあります。

戦闘中にできる行動は、かなり多い

「アクション」は、誰でも使える「利き手攻撃」(いわゆる通常攻撃)や、「呪文」のようなクラス専用のものも含みますが、いわゆる攻撃に類する行動と考えておおむね間違いありません(回復魔法などの例外もありますが)。ゲームシステム的に見るとシンプルな内容ですが、与ダメージの軸となるため重要性は最も高いと言えます。

 最後の「ボーナスアクション」は、アイテム(回復薬含む)の使用や「隠れ身」、ジャンプ、突き飛ばしといった補助的な行動を対象としたもの。一見するだけでは地味ですが、「攻撃しつつ回復薬を飲む」「ジャンプで高台に移動し、有利な立ち位置を確保」「敵を突き飛ばした後に移動すれば、機会攻撃を受けずに済む」など、戦略的な戦いにうってつけの行動ばかりです。

仲間をうまく配置すれば、後衛を守りやすくなる

 この「移動」「アクション」「ボーナスアクション」を組み合わせることで、戦略の幅は大きく広がります。さらに、条件を満たすと発動する「リアクション」や、戦局が有利になる「状態異常」の付与など、バトルに影響する要素は多種多彩。バトルひとつをとっても自由度が高く、自分なりの戦い方で挑むことができるのです。

豊富な「選択肢」と「多彩な結末」で、TRPGの自由さを再現

フィールドを探索するだけで、さまざまなサブイベントと遭遇する

 本作が持つ自由度の高さは、バトルだけに限らず、むしろゲーム全般に及んでいます。モチーフ元である『D&D』は会話による進行ゆえに無限の可能性を持っていますが、その広がりを『バルダーズ・ゲート3』は「膨大な選択肢」で表現しました。

 分かりやすく説明するため、とあるモンスターの討伐に関わるサブクエストを一例として取り上げます。あるフィールドを探索していると、深手を負って死にかけている長男と、その弟妹と出くわしました。

 まず信頼を得るべく長男の治療にあたりましたが、残念ながら目の前で命を落とします。ですが、どうやらその長男を含めた3人は、主人公たちを探していたようです。亡くなった長男への同情心もあり、「それは自分たちのことだ」と打ち明けると……そのまま弟妹に戦いを挑まれてしまいます。

人助けのはずが、殺人という結果に至ることも

 詳しい事情は分かりませんが、ここで殺されるわけにはいきません。戦力的には上回っていたので、さほど苦もなく撃退しました。しかし、傷を負った人を助けようと思っただけなのに、結果的には、きょうだい3人の死体が転がる事態に。やり切れない気持ちでいっぱいです。

 直前にセーブを済ませていたので、悲劇を回避しようとやり直してみました。そして会話中の選択肢を変えてみると、長男は救えなかったものの、話をすり替えることに成功。また、長男が負った深手は、近くの洞窟にいる魔物「アウルベア」によるものと判明します。

HPも高い強敵「アウルベア」

 そこで弟妹の意識は、長男の仇討ちに向かいました。殺し合いにならなかったことを安堵し、こっそり離脱……という選択も可能ですが、折角なのでアウルベア討伐に加わり、洞窟に攻め込みます。すると、仇であるアウルベアの背後には、子供のアウルベアの姿が。このアウルベアは、子供を守るために戦ったのかもしれません。

 しかし弟妹にとって、憎い仇なのは変わりません。強敵ですが、こちらは人数で圧倒していたので、厳しいながらもなんとかアウルベア討伐を果たしました。そこで一同が勝利を噛みしめる中、亡骸に近寄って切なげに鳴く子供のアウルベア。覚悟を持って戦ったはずなのに、妙な戸惑いが湧き上がってきます。

 子供の命も断ち、後顧の憂いを断つもよし。互いに犠牲が出た今、ここで締めくくりとするもよし。ここでもまた、プレイヤーの選択が問われます。

 ちなみに筆者は、葛藤した末、子供を見逃す道を選びました。長男が死に、アウルベアの親も死んだ。命がひとつずつ失われたので、これでイーブンと判断しました。

亡くなった親を見つめる子供のアウルベア。ここでも、プレイヤーに選択が迫る

 偶然出会った兄弟と殺し合いになるのか。アウルベア討伐に参加するのか。子供の命も奪うのか。それとも見逃すのか。サブクエストひとつをとっても、選択が連続し、結末が分岐していきます。

 結末の方向性はサブイベントによって違いますが、今回のように「全員丸く収まるハッピーエンドがない」というケースも少なくありません。だからこそ、未知の結末に向けて、プレイヤーがより良いと感じる選択をするしかないのです。

『D&D』のように「発想する数だけ選択肢がある」とまではいきませんが、それでも即決できないほど選択肢が多岐にわたり、結末が広がっていくのも事実です。この、豊富な「選択肢」と「多彩な結末」が、TRPGの会話劇を再現し、そして物語を形作っていく喜びに繋がっていきます。

 自分で紡ぎ、積み上げていく物語が、面白くないわけがありません。

* * *

『バルダーズ・ゲート3』では、選択という冒険があなたを待っている

『バルダーズ・ゲート3』が持つ特徴を自分なりに取り上げてみましたが、そのプレイ体験で味わった実感を総括すると、「冒険の体験」だと言えます。

 冒険とは、まず「未知」であること。世界も戦いも物語も、すでに知られていたら冒険にはならないでしょう。そしてもうひとつの条件は、「未決」であること。結末が決まっている物語は、着地点に過ぎないからです。

 未知な物事に関わり、まだ定まっていない結末に向かって進むこと。それを人は、「冒険」と呼びます。そして、「未知」と「未決」をたっぷりと備えている『バルダーズ・ゲート3』もプレイは、まさしく「冒険の体験」そのものでした。

 成功と失敗の果てにある、自分だけの冒険譚。どこかの酒場で、誰かに語りたいものです。

セーブ&ロードを活用するか、それとも縛るか。これもプレイヤーの選択次第

 ──と締めくくりましたが、本作の魅力を語ることで、「骨太っぽいので、遊ぶのはちょっと大変そうかも」という印象を与えてしまったかもしれません。しかし、意外と優しい一面を『バルダーズ・ゲート3』が持っていることもお伝えします。

 それは、ちょっとしたズルの範疇になりますが、「ほぼ全ての場面でセーブが可能」という点です。どれだけ判定が難しい局面でも、あらかじめ準備をしておけば、「失敗」の大半を「成功」になるまでやり直せます。ロードとセーブを繰り返すことで。

 こうしたズルをシステム的に防ぐのは、そう難しい話ではありません。しかし『バルダーズ・ゲート3』は制限を設けず、(ズルも含めた)遊びの幅を狭めていません。そんなクラシカルな優しさも、妙に嬉しいプレイ体験でした。

(文=臥待)

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