マグミクス | manga * anime * game

原作クラッシャーと呼ばれ…GONZO石川社長が語る、山あり谷ありアニメビジネス「真っ先に崖から落ちるのが役目」

現在のアニメづくり「原作に忠実」とは真逆? “原作クラッシャー”と呼ばれ…

 GONZOは、『バジリスク』のような「原作もの」を手掛けることも少なくありませんでした。近年のアニメ業界では、原作のある作品は原作に忠実に制作することを求められ、ファンもそれを当然と受け止めるようになっています。しかし、GONZOはかつて「原作クラッシャー」と呼ばれ、大胆な改変を加えることもありました。

「マーケティング的には原作通りに作った方がいいんでしょうけど、パッションがあるクリエイターは自分で作りたいイメージがあるから、どうしても原作者とぶつかることはあります。でも、クラッシュって悪いことばかりじゃないと思うんです。異質なもの同士がぶつかり合うことをクラッシュというのであって、だからこそ新しいものが生まれる。時折、GONZOが崩壊したものを生んでいたのも事実だと思いますが、新しいものが生まれるか、崩壊するかはやってみないとわかりませんから」

「マーケティング重視じゃなく、パッションで作ってきたから、今でもGONZOの作品が愛されているんだと思います」と語る石川さん。

●スタッフ大量離脱…“練馬の乱”の真相

 GONZOは、2000年代後半には上場廃止、経営難による分社化や独立が相次ぎ、スタッフの大量離脱が発生しました。一部では“練馬の乱”と呼ばれるこの現象の顛末を、石川氏はこう振り返ります。

「累積赤字が膨らんでいたので、会社を縮小せざるを得なかったんです。その時、辞めたいスタッフには『サポートするから独立しろ』と言いました。GONZOは『自律』を大事にする会社。優秀なスタッフは本来独立すべきなんです。だから、やりたいことがある人はどんどん独立して、一緒にやれることがあれば一緒にやろうという感じで、独立後も良い関係は築いています」

 この“練馬の乱”を期に、GONZOは9つの会社に分裂しました。そのなかには、Studio五組やデイヴィッドプロダクション、グラフィニカなど今なお業界で活躍しているスタジオもあります。その他、GONZOから独立して活躍する業界人は多く、ポリゴン・ピクチュアズ取締役の守屋秀樹氏や、サンジゲン代表取締役の松浦裕暁氏、スロウカーブを設立した尾畑聡明氏と橋本太知氏やスタジオコロリド創設者の宇田英男氏など、アニメ会社の中心として活躍する人材を輩出しています。これはGONZOの「自律」の精神を体現した形かもしれません。

●真っ先に崖から落ちるのがGONZOの役目

 GONZOの歴史を振り返ると、失敗も成功もあらゆることが早かったように見えますが、石川氏は「先見の明があったというより、あらゆるものに唾を付けた結果」だといいます。

 そんなGONZOは今も新しいことに挑み続けています。それがNFT(※)を活用した最新アニメプロジェクト『SAMURAI cryptos』です。

※NFTとは、Non Fungible Tokenの略称で、代替不可能なブロックチェーン上で発行されたトークンを指す。固有のデジタルデータを作成でき、資産価値を付与することが可能となっている。

『SAMURAI cryptos』

「ブロックチェーン・NFT時代に日本発のサムライとして狼煙をあげる」ことを旗印に、NFT時代の新しいアニメIP創出へのチャレンジを目指すプロジェクトで、小林誠氏、千葉道徳氏、飯島弘也氏らアニメ界の7名の著名アーティストが参加しています。

 企画の背景として、NFTを支えるブロックチェーン技術によって、従来の中央集権的ではないアニメ制作を行いたかったからだと石川氏は語ります。先述の『バジリスク』の事例のように、ファンドでは分散した権利を管理・維持するのにコストがかかり過ぎてしまうところ、ブロックチェーンならコストはほぼゼロに近いといいます。

「お金には、投資目的のプロフェッショナルマネーと応援目的のエモーショナルマネーのふたつがあります。『バジリスク』の時や上場時の株主総会でも感じたことですが、アニメにお金を出すファンはエモーショナルマネーとしてお金を出してくれています。持ち株の株価が減ったら、プロフェッショナルマネーの人なら激怒しますけど、GONZOの株主総会の時にむしろ我々は激励されていました。そうしたファンの熱量をNFTによってアニメ制作に活かせると考えました」

 GONZOの歴史を振り返ると「我々は真っ先に崖から落ちる役目だった」と笑う石川氏。しかし、その姿勢がアニメビジネスの新しい時代を切り開いてきたのも事実。30周年を迎えてもなお、GONZOは未来を向いて走り続けています。

政治家の秘書の女性に「生涯で一番好きなアニメは、中学生の時に観た『ストパン(※ストライクウィッチーズ)』です」と言われたことが思い出深いと語る石川さん。

◆ ◆ ◆

 GONZOは、2022年9月11日に設立30周年を迎えるにあたり、設立30周年を記念したクラウドファンディングを実施中です。

■プロジェクト名
『GONZO30周年アニバーサリー』応援クラウドファンディング

『GONZO30周年アニバーサリー』応援クラウドファンディング

■対象作品
蒼の彼方のフォーリズム、アフロサムライ、かくりよの宿飯、カレイドスター、巌窟王、SAMURAI7、ストライクウィッチーズ、SoltyRei、超重神グラヴィオン、爆裂天使、ブレイブストーリー、ぼくらの、LASTEXILE、ラストエグザイル-銀翼のファム- (五十音順)

■実施期間
2022年9月11日(日)18:00 ~ 2022年10月15日(土)24:00

▼クラウドファンディングの詳細はコチラ
https://animefund.com/project/gonzo30th

【画像】名作ぞろい! GONZOの代表作

画像ギャラリー

1 2 3