『サザエさん』の「お隣さん」は伊佐坂先生じゃなかった? 平成・令和世代は知らない「消された一家」
『サザエさん』のレギュラー7人が一斉に「消えた」日
浜さん一家の突然の引っ越しにショックを受けるカツオ、ワカメ、タラちゃん。そこで浜さん一家と磯野家、ノリスケ、タイコさん、イクラちゃんの波野家が揃って伊豆を旅行することに。旅先では、桜と富士山を眺めつつ、テニスやゴーカート、サイクリングなどをアクティブに楽しみます。
タラちゃんのショックはなかなか和らぎませんでしたが、旅先でミツコさんと和解。しかし、一方でノリスケとタイコさんの間で不穏な空気が……。イクラちゃんの表情も沈みがちになります。
なんと、旅の途中でノリスケ一家が名古屋に転勤することを発表したのです。イクラとの別れを悲しんでタラちゃんは号泣。ラストはサザエが宿泊先のスカンジナビア号(かつて沼津の沖合に係留されていた豪華客船。ホテルとして営業後、06年に沈没。Aqours「smile smile ship Start!」のPVは同船がモデルではないかと話題になった)から夜景を眺め、ミツコとイクラへの別れを思うというお話でした。
浜さん一家との別れのはずが、途中からノリスケ一家との別れがメインになってしまった感のあるエピソードですが、昭和の『サザエさん』ファンからは名作として知られています。なお、この日放送された「山はまだ雪」では三河屋さんの御用聞き・三平が郷里に帰ってしまいました。『サザエさん』のレギュラー7人が、この日を境に一気に姿を消したのです。
このような“大転換”が行われた理由は定かではありません。ただ、この日をもって『サザエさん』を初回から支えてきた宣弘社が撤退、ホームドラマ路線へと導いた初代プロデューサーの松本美樹さんが降板し、脚本家も一斉に降板するなど、制作体制が大きく変化したことが関わっていると考えられます。
いずれにせよ、『サザエさん』が最高視聴率39.4%を記録したのは浜さん一家登場後の1979年ですし、火曜日に再放送の『まんが名作劇場 サザエさん』が放送されていたのが75年から90年代半ばなので、浜さん一家時代と大きく重なっています。平成・令和世代は知らなくても、『サザエさん』がもっとも多くの人たちに見られていた昭和の頃の「磯野家の隣人」といえば、やっぱり浜さん一家だと思うのです。
(大山くまお)