マグミクス | manga * anime * game

『ドラクエIV』PSリメイク版で「賛否両論」巻き起こった理由 「悲劇回避」のシナリオなのにナゼ?

ドラマ性にも力を入れ、ファミコン最後のシリーズ作を飾った『ドラクエIV』。その切ない物語はリメイク版で新たな道が示されたものの、プレイしたファンの意見はなぜ分かれたのか。

最も遠く、けれど誰よりも近くにいた勇者とピサロ

「ルビーのなみだ」に群がる人間の欲深さが、ロザリーの悲劇に繋がった
「ルビーのなみだ」に群がる人間の欲深さが、ロザリーの悲劇に繋がった

 ファミコンにRPGブームを起こした作品のひとつであり、今もなお多くのファンを抱えている『ドラゴンクエスト』シリーズ。最初期に展開したロト三部作の時点で、国民的な人気を集める話題作へと成長していました。

 そして、新たに幕を開けたのが「天空シリーズ」。その1作目を飾ったのが、ファミコンソフト『ドラゴンクエストIV 導かれし者たち』でした。本作は、オムニバス形式のゲーム進行や第5章のAI戦闘、馬車システムの導入など、シリーズ初の要素を多数用意し、新鮮な刺激を与えます。

 また、よりドラマチックになった物語も注目を集め、好評を博しました。特に、主人公である「勇者」と、悲しき暴走で我を失った「ピサロ」の関係性は、ユーザーたちの心を大きく揺さぶります。

 勧善懲悪では語れない『ドラクエIV』。そこには、勇者の怒りやピサロの憎しみ、切ない別れなど、さまざまな感情を刺激する展開が詰め込まれており、痛みも伴う物語が本作を忘れられない存在にしました。

 そんな『ドラクエIV』が、後にPlayStationソフトとしてリメイク。約9年の時を経て蘇っただけでなく、新たな物語が追加され、勇者とピサロの関係性に新たな道が示されます。しかも、ファミコン版では回避できなかった悲劇を乗り越える展開もあるなど、オリジナル版を遊んだ人にとって見逃せない新要素が満載でした。

 これで、切ない物語が報われる……と思いきや、リメイク版の追加シナリオについて、ファンの意見が大きく分かれます。悲劇を回避した物語が、なぜ賛否両論を招いたのか。その経緯と背景に迫ります。

 なお、本記事は『ドラクエIV』(リメイク版含む)のネタバレを含んでいるため、その点にご注意ください。

●戦う道しかなかったファミコン版

 まず、オリジナルにあたるファミコン版『ドラクエIV』のシナリオを簡単に紹介します。魔族の王・ピサロは、人間を滅ぼして世界を魔族のものにする野心を持っていました。そして世界征服を進めると同時に、野望を阻むと予言された勇者を見つけ、殺そうと企みます。

 プレイヤーの分身である勇者は、山奥の村で幼馴染の「シンシア」や村人たちと共に暮らしていました。勇者の旅立ちの日まで、魔族に見つからないようにひっそりと。しかしその願いも空しく、魔族が村を襲撃します。

 村人たちは、いずれ世界を救う勇者を守るため、身を挺して魔族に立ち向かいます。シンシアも勇者の姿に変身し、身代わりとなって絶命。この入れ替わりに気づかなかった魔族は、目的を達したと誤解して引き上げ、勇者は生き延びることができました。数多くの犠牲のおかげで……。

 絶望を突きつけられて始まった勇者の旅は、多くの仲間を得て、魔族と戦うだけの力を身に着けていきます。プレイヤーの心情としては、「世界を救う」という正しい行いだけでなく、「村のみんな、そしてシンシアの仇を討つ」といった復讐心を抱いた人も多かったでしょう。

 そんな旅の中で、ピサロが心を許したエルフの娘「ロザリー」と知り合います。彼女は、流した涙がルビーになる体質を持っており、そのせいで欲深な人間につけ狙われ、虐待を受けた過去を持っていました。

 その後、ロザリーは再び人間に捕まって命を落とし、この一件をきっかけにピサロは暴走。自らの身に「進化の秘法」を用いて、自我を失う破壊の権化に変貌し、もはや意志の疎通も適わぬ状態のまま勇者との最終決戦が幕を開けます。

 勇者にとってピサロは、シンシアや村人たちの仇であり、人間を滅さんとする存在。しかし、大事な人を奪われる悲しみは、勇者自身にも身に覚えがあります。憎い相手が、同じ悲しみを抱いていたと知り、善悪では割り切れない最終決戦に立ち向かう……この複雑な関係性が、プレイヤーの心に忘れがたい体験を刻みつけたのです。

【画像】絶望! ピサロを襲った悲劇とその結末(6枚)

画像ギャラリー

1 2