大不評『着せ恋』ドラマは本当に駄作? 実はある「良アレンジ」と「誤解」とは
誤解されている部分と批判されても仕方ない部分
●「オタクの部屋になっていない」という誤解
また、単純に誤解を生んでしまったポイントがあります。「海夢の部屋がぜんぜんオタクの部屋になっていない!」とツッコまれた第1話や第3話で映っていたのは、実はリビングルームであり、その後の第6話ではしっかりアダルトゲームのポスターも貼られた、原作マンガを再現した部屋が登場します。
そのほか、原作およびアニメでのラブホテルでコスプレをするシーンは、その海夢の部屋で行われるという改変になりましたが、その直後のハプニングも面白かったですし、全体的なテンポも良くする変更としてアリだと思えました。
また「頭に巻いたメジャーがただ巻いただけで目盛りが合ってない」というツッコミは確かにその通りなのですが、「採寸自体に慣れていなくて、かつ水着姿(この水着の布面積が多いことも批判されていますが)の海夢にドギマギしていたから」というシーンにも見えたので、個人的には許容範囲でした。
●肝心のメイクの出来栄えや細部を突き詰めきれていない問題
ここまで擁護をしてきましたが、反面どうしても厳しく思えてしまったのが、第3話で海夢がコスプレをしたときの、肝心の「メイク」です。「私……ちゃんと雫たんになれてるかな?」と聞く、とても重要な場面なのですが、実際の映像を素人目に見ても、コスプレ衣装に合ってない、出来栄えがいいとはとうてい思えなかったのです。「演じている永瀬莉子さんは悪くない」とフォローがあった上で、「スタッフがコスプレ衣装のためのメイクをまったく分かってない」などと酷評が寄せられるのも当然だと思えました。
コスプレのためのノウハウの解説も、テンポのいい編集と見せ方で興味深く見られましたし、第6話でのコスプレ衣装およびメイクはそちらに比べてとても良くなったと思えただけに、ずっとこの、第3話のメイクがノイズとして引きずってしまった印象は、とても残念でした。
他にも、新菜が住む「五条人形店」の再現度が原作そのままだと称賛される一方で、新菜が初めに使っていたのが年代物のミシンではなくなったり、海夢が新菜の恋心を自覚する場面が電車ではなくなったりと、「そこは変えないで欲しかった……!」と思った部分もやはりあります。予算や制作期間が少なかったという事情もあるかもしれませんが、そうした小道具や舞台などの細部はファンであればあるほど気になるので、もう少しだけでも突き詰めて欲しかったです。
●第7話ではさらなる改変の批判も
さらには第7話では、アニメ版では未登場だった、塩崎太智さん演じる「姫野あまね」が出てきました。しかし、原作では20歳の大学生だったのが新菜たちの高校の先輩になっているなど、やはり改変が批判を浴びています。
しかしながら、筆者個人としては前述してきた改変は受け入れられた、または実写ドラマ独自のいいアレンジだと思えた部分もありましたし、その第7話の改変もこれから意義があるものだと分かる可能性もあります。
原作およびアニメの熱心なファンが多いからこその批判が出てしまうのは致し方ないですが、元の物語やキャラ造形が強固だからこそ、しっかり受け継がれている面白さは、実写ドラマ版にも確かにありました。まずは、SNSでの極端な酷評に惑わされすぎず、見てみてほしいです。
※塩崎太智の「崎」の字は「たつさき」
(ヒナタカ)