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【漫画】図工の授業で「自由に」と言われ「分かんない!」 男の子の困惑に共感多数

小学校の図工の時間、今日は「街を作ろう」という工作の最終回。みんなが作品の仕上げに取りかかっているなか、男の子の机には何もありません。「自由に作っていいよ」と言われて、何を作ったらいいか分からないのです……。かくたすずさんのマンガの結末に大きな反響がありました。

自由工作が苦手な主人公の気持ちに「分かる」「自由は不自由」

自由工作で何を作ったらいいか分からない横山くん(かくたすずさん提供)
自由工作で何を作ったらいいか分からない横山くん(かくたすずさん提供)

 小学校の図工の時間、今日は「街を作ろう」という工作の最終回。「今日で完成させること」と先生に言われ、横山くんは困っていました。みんなが作品の仕上げに取りかかっているなか、横山くんの机には何もありません。「自由に作っていいよ」と言われて、彼は何を作ったらいいか分からないのです……。

 かくたすずさん(@cactuses_manga)による創作マンガ『図工の「ある授業」が苦手な子』がTwitterで公開されました。自由工作に悩む男の子がクラスメイトの作品に触れて少し変化する姿が描かれています。

 読者からは「すごく分かる」「泣けた」「いい先生」「最後救われてよかった」「私も“自由”が苦手だった」「図工の時間が大嫌いだった」「自由と言いつつ、期待される答えを出さないとダメ出しされる」「自由は不自由」などの共感の声があがりました。Twitter投稿は4万いいねがつく話題作となっています。

 作者のかくたすずさんに、お話を聞きました。

ーー『図工の「ある授業」が苦手な子』のお話はご自身の体験がもとになっているそうですが、マンガに描こうと思ったきっかけを教えて下さい。

 私はこのマンガを描く以前は、ファンタジーマンガばかり描いていました。2021年にマンガのコミュニティに所属した時、エッセイマンガを描いている人が多くいたので、自分も何かエッセイっぽいマンガを描いてみたいと思いました。結果的に本当に自分の体験だったことは1ページ目だけで、あとはフィクションの内容になったので、本当の意味でのエッセイマンガではないのかもしれません。

 自分の経験から描けそうなものを探した時に、まずジャンルとしてはものづくり全般で考えてみることにしました。何かを作るのは昔から好きなので、そのなかからなら題材が見つかると思ったからです。

 それで小学生の時の図工の時間に、自由工作がなかなか作り出せず、何もせず座っていたことを思い出しました。自分の時は題材が何だったかよく覚えていないですが、同じように画用紙1枚の上を自由に使って、島とか山を作る課題だった気がします。そこから拝借して、街を作るというお話にしました。

ーー男の子の気持ちが丁寧に描かれています。ストーリー展開や各シーンの描写で工夫なさったところについて教えて下さい。

 少し特殊な作り方かもしれないのですが、このマンガを作る時は、1ページ完成させ、その次の1ページをまた考えて完成させ……ということを繰り返して作りました。なので、自分の体験にもとづいて最初の1ページ目を描いた時には、その続きをどうするかも、結末も特に決まっていませんでした。

 通常マンガを描く時は、最初から最後までどのようなストーリーにするか、どのようなコマ割りにするかをしっかり考えてから作ることが多いかなと思うのですが、SNSで公開するだけのマンガだからそういう決まりも気にする必要はないし、気楽に描こうと思って始めました。

 前半で街の中に迷い込むところを描きながら続きを考えて、とても大きな街を作っている女の子を出そうと思い、そのあとの結末まで少しずつ考えていきました。

 描写については、人物の気持ちを風景で説明したり、カメラ画面での撮り方を工夫するのは好きなので、街の見せ方を変えて主人公の男の子の気持ちを表せるように工夫しました。

「自由」が襲いかかってきて、こわい!(かくたすずさん提供)
「自由」が襲いかかってきて、こわい!(かくたすずさん提供)

ーークラスメイトの作品を作るという結末が、「自分の作りたいものが見つかる」という結末よりもリアルに感じられました。結末に込めた思いを教えて下さい。

 最後の主人公の言葉は、ないとこの物語がオチてないくらい大事な言葉な気がしますが、最後の2ページくらいを描いている時にやっと思いつきました。

 結末をこのようにしようと思いついたのは、マンガを描き始めて最初にお世話になった出版社の編集さんに、「あなたが一生描けそうなテーマが見つかるといいよね。例えばよしながふみ先生がジェンダーをテーマにたくさんの作品を描いているみたいに。まだ2作しか見てないけど、人とのつながりとかかなあ」と言われたことがあったのを思い出したからです。2作しか描いてないのにそんなこと分かるのかと当時は思いましたが、言われたあと何となくずっとその言葉を覚えていて、それで結末を思いつきました。

ーー描きながら続きを考える、という特殊な作り方をされたということですが、その作り方をしてよかったと思うことはありましたか?

 この作り方をしてよかったと思うことは、まず先生の接し方についてです。1ページずつ描くごとにSNSで公開していたのですが、1ページ目だけを公開した時点で「先生が子供を放っておいてひどい」という意見がありました。

 しかし、私には「先生のせいで作品が作れなかった」ということを伝える意図はなかったので、どうしようかと思いました。私の小学生の時の先生は、私が何も作れずにいるのを見て、何とか作り出せるようにいろいろと声をかけてくれたからです。他の子の作品や教科書の作例について説明したうえで、例えばこういうのなんかどう? とか。

 それでも私はなかなか作り出すことができませんでした。先生もどうしたらいいか分からず苦労していたんだろうなと思います。自分の体験では先生が見守ってくれていたので、できればこのマンガでもそうしたいと思い、後半の先生とのやりとりが生まれました。

 もうひとつ、このマンガで結果的によかったと思うことは、男の子がなぜ、この図工の時間には「街」というものを作れなかったのか? という理由を描かなかったことです。実際に自由工作で作れないという経験があった人はたくさんいて、その理由はそれぞれ異なっていたようだからです。

 例えば「自由と言われて本当に自由に作っても結局直されるから」とか、「自由に作っていいと言われてもそもそも図工が好きではない」などです。また、自分の体験ではなくても、「この子が作れないのはこういう理由があるからじゃないか?」という解釈も人によってさまざまでした。もし作中でこの男の子が特定の理由で作れないと説明していたら、共感や解釈の幅が悪い意味で限定されていたと思います。

ーーTwitterで精力的にマンガを公開なさっています。創作するうえでの原動力になるものはありますか?

 私にはマンガを描くことでどうしてもこうしたい! という野望とかは特にありませんが、マンガを読んで暇つぶしや何かの発信のきっかけにしてもらえたならうれしいです。

(マグミクス編集部)

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