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ロボットアニメの新常識生んだ「ウォーカー・ギャリア」の衝撃 背景には「クリスマス」が?

「パターン破り」で知られた名作『戦闘メカ ザブングル』。それまでのロボットアニメの「お約束」を次々と塗り替えたことからついたあだ名ですが、逆に、現在のロボットアニメでパターンとなったお約束を初めて導入した作品でもありました。

今では当たり前な「主役機交代」のきっかけ

ウォーカー・ギャリアは『ザブングル』後半の主役機となる。画像は「戦闘メカ ザブングル R3 1/100 ウォーカーギャリア」(BANDAI SPIRITS)
ウォーカー・ギャリアは『ザブングル』後半の主役機となる。画像は「戦闘メカ ザブングル R3 1/100 ウォーカーギャリア」(BANDAI SPIRITS)

 本日2022年8月7日は、40年前の1982年に『戦闘メカ ザブングル』第26話「イノセント大乱戦」が放送された日です。このエピソードで初登場したのが、作品後半の主役メカとなる「ウォーカー・ギャリア」でした。後に定番化した主人公機交代劇のきっかけとなったギャリアについて解説していきましょう。

 作品中盤に登場し、後半までの主人公メカとなる通称「2号ロボ」は、今では当たり前の存在となっていますが、本格的に登場して活躍したのはギャリアが最初だと言われています。たとえば、ゲッターロボからゲッターロボGへの交代は別番組となったためのバージョンアップ、メカンダーロボは2号といっても外見上はほとんど同じと、意味合いが違いました。

 あえて言うならば、特撮番組『ジャンボーグA』でのジャンボーグAからジャンボーグ9がありますが、これも本作の持つ交代劇の意味とはちょっと違います。ザブングルからギャリアへの主役機交代は、当時のアニメファンをおどろかせた、富野由悠季監督が本作で試みた「パターン破り」の一環でした。

 そうはいっても予兆となる点は事前にいくつか見受けられます。そのひとつが、スポンサーである玩具会社がクリスマス商戦に向けた目玉商品という点でした。現在ではクリスマス商戦のために新アイテムを発売するのは当たり前のことですが、当時はまだそれほど確立したものではありません。主力商品となる主役機が発売されると、それ以上の展開はないのが普通だったのです。

 しかし、本作のスポンサーだった株式会社クローバーは、3年前から1年間放送する予定のアニメ作品後半に強化アイテムを投入していました。『機動戦士ガンダム』のGファイター、『無敵ロボ トライダーG7』トライダーシャトル、『最強ロボ ダイオージャ』クロスエイダーです。いずれも主役機と合体するというプレイバリューを意識した拡張商品でした。

 つまり本作も、作品後半にザブングルと合体する飛行機的なものが発売されると当時のファンは思っていたので、ギャリアの登場は画期的だったというわけです。ちなみに当初は2機のザブングルが合体するというアイデアもあったとのこと。こういった既成概念にとらわれずに新たな主役機を登場させたという点で、本作が後の作品群に大きな影響を与えたという点は間違いないでしょう。

 ここまでの解説で異論を唱える人は、おそらく『タイムボカンシリーズ』を例に挙げることと思います。確かにシリーズ第二弾『ヤッターマン』のヤッターワンが破壊されてからのヤッターキングの登場、ヤッターゾウへの交代という前例がありました。しかし、作品タイトルがロボット名でないことや、他作品に与えた影響を考えるとちょっと違うといえるでしょう。

 むしろシリーズの交代劇でインパクトがあったのが、その後のシリーズの『逆転イッパツマン』の逆転王から三冠王でした。実は本作と同じ年の作品だったのですが、2号ロボの登場が1982年9月11日で、わずかの差でギャリアに初の交代劇を譲っています。

 余談ですが、この『イッパツマン』の交代劇の原因となった悪役・隠球四郎(かくれ たましろう)の担当声優は、『ザブングル』の主役ジロン・アモスの担当声優である小滝進(現在は大滝進矢)さんでした。

【画像】クセの強いデザインが魅力的? 『ザブングル』に登場したメカたち(5枚)

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