【漫画】多才な女子大生、自己紹介で「特技はない」その理由は？「生きにくい考え方だね」

「自分より上がいるから」自信が持てない女子に共感集まる

　小説を書くことが好きで、文学賞の上位に入るほどの才能がある女子大生・みえは、就職先の内定式に来ました。しかし自己紹介で「特技」を聞かれると、とまどいながら「特にありません」と答えます。幼なじみが理由を聞くと、「私がやってること全てにおいて、周りに上位互換がいるから、特技とは言いにくい」そうで……。

　奥灘幾多さん（@hitotoseshiki）による創作マンガ『特技は特に』がTwitterで公開されました。就職活動などで自己PRとして言う機会の多い「特技」ですが、その定義はあいまいです。この物語では、常に上を見てしまい、自信を持って「特技」と言うことができない主人公の心の動きが丁寧に描かれています。

　読者からは「すごく分かる」「刺さった」「共感しかない」「私も特技を言えない」「趣味という言葉に逃げるほうが楽」「SNSがこれを助長してる」などの声があがり、Twitter投稿は2800以上の「いいね」が集まっています。

　作者の奥灘幾多さんに、お話を聞きました。

ーー奥灘幾多さんの漫画家としてのデビューのきっかけを教えて下さい。

　小さい頃から物語を見るのも作るのも好きだったのもあり、大学に入学する少し前にマンガを生業にすると決めて描き始めました。

　大学在学中に、自分の好きな作家をたくさん輩出している新人賞である「アフタヌーン四季賞」や「ちばてつや賞」に投稿したことでデビューしました。といっても、まだ漫画家であると胸を張って言えないのが現状ですが……。

ーー『特技は特に』のお話はどのように生まれたのでしょうか？

　描いたのが2年前なので少しあやふやですが、「モーニング」の増刊のコンペに出す用に描きました。着想としては、自分を納得させる考え方のひとつを作り出すために描き始めたのだと思います。自分も特技どころか趣味も胸を張って言えない人間なので。

　結果的にコンペを通らなかったマンガなのですが、自分としては当時描いておいてよかったなとは思っています。

ーー自分に自信が持てないみえの心情が繊細に描かれていると感じました。みえの心情の描写で工夫なさったところや、心がけたことなどはありますか？

　分かりやすさを求められていたので、それまでの自分の短編マンガよりも構造や思考・心情の流れが伝わることを意識して描こうとしていた記憶があります。普段はより主観的な演出に傾きがちなのですが、そうなりすぎないよう抑えながらも、みえの心情に寄り添って読み進められるようにしようとしました。

ーー作品に対する反応で、特に印象に残った読者の声について、教えて下さい。

　自分の感覚は普遍的であると考えているので、「身近にあって、とても遠い、簡単そうであって、とても難しい」とコメントをいただけたのはうれしかったです。普通の感情や考え方に切り口や演出で面白みをもたせられるのなら、まだまだたくさんマンガを描いていけるなと思えました。

ーー本作も含まれた電子書籍『芥場より馳せて 奥灘幾多短編集』が配信中です。収録内容や見どころなどをご紹介いただけますか？

　マンガを描き始めて間もない頃の短編も収録されているので、よく言えば成長が見られる、悪く言えば青く拙い短編集です。最新刊の『スライトセルフエスティーム』も併せて読んでいただけると、より変化が見られて楽しんでいただけるのではないかと思っています。

ーー今後の創作活動について教えて下さい。

　目先の目標としては漫画家を名乗れるようになることです。それだけでご飯を食べていくという意味で。息の長い作家になりたいと考えているので、皆さんにたまには思い出していただけるような、自分が描く意味のあるマンガを描いていきたいです。