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原作そのままは無理…ならどうする? マンガ実写化で「開き直った」成功作を振り返る

近年さらに人気マンガを実写化した作品が増えています。そのなかには原作をそのまま再現するのは無理と判断し、いい意味で思い切った改変をするケースも少なくありません。今回はそのなかで、特に上手くいったと言える作品をご紹介します。

「再現」とは一味違う、設定やビジュアルのアレンジに注目!

映画『テルマエ・ロマエ』ポスタービジュアル (C)2012「テルマエ・ロマエ」製作委員会
映画『テルマエ・ロマエ』ポスタービジュアル (C)2012「テルマエ・ロマエ」製作委員会

 近年、人気マンガ・アニメの実写化作品が続々と発表されています。ストーリーやキャラクタービジュアルの再現度が高ければ高いほど、評価されるケースが多く見受けられますが、その一方で、実写化にあたって思い切った改変や演出をしたことが、成功につながるパターンも少なくありません。今回は、上映時間も限られているマンガの実写化映画で、いい意味で「開き直った」アレンジをした作品をご紹介します。

●『おそ松さん』

『おそ松くん』(原作:赤塚不二夫)に登場した六つ子が成長し、ニートになった姿を描いたオリジナルアニメ『おそ松さん』は2022年にまさかの実写映画化が実現しました。社会現象になるほど人気を博したアニメの実写化、さらにはアイドルグループ・SnowManが六つ子を演じるということで、公開前から議論を巻き起こしましたが、蓋を開けてみると大胆な「前提条件の使い方」が面白いと話題になりました。

 まず、現実に六つ子を使うのは無理であるため、どう見ても顔が似ていないSnowManメンバーの六つ子配役を正当化しようと、初っ端からメタ視点のギャグが進行していきます。作中で演者が「実写化なんて無理」「CG使わなきゃだめ」と最初から開き直ってくれるので、観客側も「そういう笑いなんだ」という心持ちで観ることができるのです。六つ子役以外のメンバーが「物語終わらせ師」として登場するなど、アニメとは別物になっていることを踏まえる必要がありますが、この思いっきりメタな視点やカオスな展開、そしてシュールなギャグは、アニメと共通した『おそ松さん』らしさ、そして赤塚作品らしさから生まれたと言えるでしょう。

●『テルマエ・ロマエ』

 古代ローマの浴場設計技師が現代日本にタイムスリップし、日本の風呂文化にカルチャーショックを受けるさまを描く『テルマエ・ロマエ』(原作:ヤマザキマリ)では、実写化するうえで越えなければいけない高いハードルがありました。それは、主人公をはじめとする登場人物の多くが、「古代ローマ人」ということです。もちろん海外の俳優が演じる可能性もあったと思うのですが、同作は一貫して日本人が演じています。これこそ、いい意味での開き直ったアレンジでしょう。

 主演の阿部寛さんや北村一輝さん、市村正親さんなど、顔もキャラも濃く、体格の良い俳優がキャスティングされている点には、原作へのリスペクトを感じます。外国人エキストラに紛れていても違和感が仕事をせず、とてもナチュラルに溶け込んでいました。この「開き直り」のおかげで、原作のセリフなどもしっかり再現され、日本語ならではの笑いのテイストも表現されています。

●『帝一の國』

 昭和の全国屈指のエリート高校を舞台に、生徒会選挙を巡る学園闘争を描いた『帝一の國』(原作:古屋兎丸)の実写化は、キャラクタービジュアルの再現度が高いと原作ファンからも絶賛された作品です。主演の菅田将暉さんをはじめ、野村周平さんや竹内涼真さん、志尊淳さんなど、脇を固める俳優陣も主役級の豪華な座組みとなった同作でも、思い切った改変がされています。

 全14巻の原作を約2時間の映画にまとめるため、主人公・帝一の1年生時の選挙をストーリーをベースにし、2年生編はまるごとカットされました。ラストの帝一たちの選挙シーンは原作同様に山場として描かれていますが、2年生編のカットによって投票の展開や印象が多少変わっています。賛否両論ある部分でもありますが、独特な世界観を崩すことなく実写化に落とし込むための改変でした。

(椎崎麗)

【画像】ギャグマンガは「開き直り」やすい? 思い切った改変をした実写化映画たち(8枚)

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