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ロボットが感情を持つとどうなる? 43年前に手塚治虫が描いた映画『火の鳥2772』

マンガのなかで、未来の首都高を描いたり、大地震、テロ、令和のパンデミックまで予言していたとも言われる手塚治虫先生。映画『火の鳥2772愛のコスモゾーン』も、近い未来に起こりうる問題を予言しているのでしょうか。

「怖かったわ…」は本当に恐怖のひと言?

「火の鳥2772愛のコスモゾーン」DVD(東宝)1980年サンディエゴ・コミック・コンベンション・インクポット賞、1980年第1回ラスベガス映画祭動画部門賞
「火の鳥2772愛のコスモゾーン」DVD(東宝)1980年サンディエゴ・コミック・コンベンション・インクポット賞、1980年第1回ラスベガス映画祭動画部門賞

 2023年、手塚治虫の長編大作『火の鳥』を原作とする新作アニメがSTUDIO4℃により制作されます。タイトルは『PHOENIX:EDEN17』、ディズニープラスで世界(中国本土を除く)独占配信されます。『火の鳥』は、伝説の不死鳥の生き血を飲むと不老不死を得られるという設定の上、古代から未来まで数千年にわたる時代で繰り広げられる、人の生死や愛と平和を描く物語です。

 映画『火の鳥』はこれまで8本制作されていますが、手塚治虫氏本人が原案・構成・総監督を務めた唯一の作品が『火の鳥2772愛のコスモゾーン』です。公開は43年前の1980年で、物語の設定は22世紀初頭なのですが、いま観てみると、ある問題が描かれているため少し怖くなります。それは、「ロボットの感情」です。

『火の鳥2772愛のコスモゾーン』の舞台は、地球連邦によって人間が生まれてから死ぬまで管理されている未来世界。試験管ベビーから生まれ宇宙ハンターとして育てられたゴドーは、宇宙の鳥2772(火の鳥の呼称)の生け捕りを命じられます。

 主人公・ゴドーは生身の人間と交わることなく、閉鎖された機械の部屋のなかで宇宙ハンター育成用育児ロボット「オルガ」に育てられます。飛行機や車などに姿を変えられる機能を持ち、ゴドーの身体能力を高める成長をサポートします。

 実は、オルガには欠陥があり、ケーキを作って食べさせるなど、規定には含まれない行動をとります。これが結果的にゴドーを優しい青年に育てたことにもなりました。注目したいのはこのオルガです。

 青年になったゴドーは宇宙ハンター訓練所へ。ゴドーはオルガを友達・パートナーとし、どこへ行くにも必要だと言いますが、一方でオルガに対し「おまえはロボット」「ロボットにはわからない」、つまり「感情がない」個体として扱います。

 このオルガに、現代で言うAI(人工知能)が内蔵されていたとするなら、膨大なゴドーの行動データをもとに、命令に従う行動や困れば助ける補助、攻撃といった行動を遂行することになります。しかしそこに「感情」は持たないはずです。ロボットは「生き物」ではないのですから。

【画像】シリーズ屈指の衝撃ストーリー! 「火の鳥 望郷篇」(6枚)

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