「途中で終わってほしかった」ジャンプ名作マンガ・3選 尻すぼみは「神展開」の証?
「週刊少年ジャンプ」と言えば、今でこそ歯切れ良く終わる作品が多い一方、かつては終わりを「引き延ばしている」と揶揄された人気作もありました。世間の評価も固まっている「ジャンプ」名作マンガから3本を選んで、その終わり方を考察しました。
途中の展開が神すぎると、その後が蛇足に感じてしまう?
「宿敵とのバトルに勝利する」「ラブコメで告白されて両想いになる」「事件が解決する」……最高のクライマックスでマンガが完結してくれると、読者としては一番気分が良いものです。
ですが、人気作品が長期連載化すると、どこが頂点なのか、読者それぞれの受け止め方が違ってきます。
“もっと早く終わった方が綺麗に完結したのでは?”とたびたび議論されがちな「週刊少年ジャンプ」の名作マンガから3作品にスポットを当てます。
●北斗の拳
「我が生涯に一片の悔い無し!!」
文明の崩壊した世界を、暴力という秩序で治めようとした拳王・ラオウが最期に残した言葉です。ユリアへの愛で最強の奥義に目覚めたラオウは、同じ奥義で義弟のケンシロウに敗れ去って、この言葉とともに自らの命に幕を引きました。
作品を見事に描ききっており、「ここで終わっていた方が良かった」としばしば話題になる名シーンです。ですがケンシロウはこの後も、北斗神拳に絡みついた宿命のために戦い続けます。
最終回でも、ケンシロウは自分を慕ってくれる少女の愛を受け取らず、ただひとり、悪へと拳を振るい続けます。人々の失われた愛を取り戻すために、自分へ向けられた愛は受け取らないという、自己矛盾した哀しき暴力。それが北斗の拳だと証明する戦いが、ラオウ以後では描かれていたのでしょう。
●みどりのマキバオー
「な…何で…何でこんな事に命を懸けなきゃならないんだ! 何で!!」
ロバより小さいコミカルな体型で生まれたマキバオーが、ライバル=カスケードの病を知って吐き出した本音です。この後、マキバオーは泣きながらもカスケードを追う形で、有馬記念のレースに完勝します。両者が互いを称え合い、勝者は世界へと羽ばたく。第一部の美しい完結でした。
だからこそ、続く第二部の世界編は蛇足だという意見もあります。森林、水撒き、激しいアップダウンの連続など、馬の安全を考えない描写が、一部読者の興を醒ましました。現実離れしたレース展開は、命がけで走るというテーマのためでも、「やりすぎ」と感じてしまうファンもいたようです。
「血だけじゃねえんだ!! オレ達 ターフで命を懸けている者にしかわからねえものがあるんだよ!!」
病を押して走ったカスケードが「種馬として子孫を残すために、これ以上走るな」と言われて叫んだセリフです。世界編で故障したマキバオーは、カスケードのこの言葉を見事に受け継いで、最終回で復活して叫んでいます───「挑戦するということを…教えてやるのね!!」
●ドラゴンボール
「子供時代の“摩訶不思議な大冒険”こそが至高」「いや宇宙にまでスケールアップしたフリーザ編が一番熱い」「いやいや息子に後を託して退場していくセル編もいい話だ」etc……
物語の区切りが明確なだけに、「ドラゴンボールはどこで終わった方がよかった論」は、しばしばファンの間でも議論になります。冒険要素とバトル展開の比率が各章ごとにかなり違っていて、好みが分かれるためです。ここでは、主人公の孫悟空(そん・ごくう)自身の視点から最終回を振り返ってみます。
バトルマニアの印象も強い悟空ですが、ラディッツと対峙して「こうやって向かい合ってるだけでも正直いってこわいぐらいだ……」とおびえたり、フリーザ戦で「ま…まいったな……勝てねえ……」と打ちのめされたり、何度も弱音を吐いています。桃白白(タオ・パイパイ)をはじめ、大敗することも珍しくありません。そんな悟空に修行をつけた亀仙人の教えは「武道は勝つためにはげむのではない おのれに負けぬためじゃ」
強敵に勝つから凄いのではありません。弱い自分に負けまいと戦う心の強さこそがカッコいいのです。魔人ブウに止めを刺すときに、悟空は語りかけました。「こんどはいいヤツに生まれ変われよ…一対一で勝負してえ…待ってるからな…」
最高の強敵(魔人ブウ)の生まれ変わりであるウーブに修行をつけて、再戦を楽しみにする原作ラストこそ、バトルマニアであり、自分に負けたくない悟空らしい終わり方と言えるのかもしれません。
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名作とされるマンガには、たいてい「今が最高に熱い!」と読者に感じさせるピークがあるものです。しかし、どこをピークに感じるかは、人によって違います。だからこそ、どうして“その終わり方をしたのか”に注目してみると、新たな気づきを得て、好きな作品の新しい顔に出会えるはずです。
(かーずSP)